久保田さん拘束直後にSNSに出回った写真。警察署で横断幕を持たされて撮影されたものだと久保田さんが証言。

<ミャンマー>久保田さん拘束事件の真相(1) 「逃げたら撃たれる!」 2人組が頭に銃を突き付けた…逮捕の瞬間

ミャンマーで3カ月半にわたって拘束されたドキュメンタリー作家・久保田徹さんの事件について検証する連載の第2回は、彼が最初に連行された警察署で受けた不当な扱いについて解説する。久保田さんはここで、普段は外国人の目に触れることはない数々の理不尽な現実を目にすることになる。(ジャーナリスト・北角裕樹

◆証拠写真は「横断幕持て言われ撮影」

久保田さんが7月30日、ヤンゴン市内のデモ現場で銃を突きつけられて連行されたことは前回述べた。その後久保田さんは、管轄の南ダゴン警察署に連れていかれる。そこでまず始まったのは、写真の撮影だ。

これは、同じくミャンマーでの拘束された筆者も経験がある。捜査員の他、多くの人が入れ替わり立ち代わり写真を撮っていくのだ。何に使われるのかわからず不気味だったが、拘束された身では拒否することなどできない。

久保田さんは、「正面や横向きなどたくさんの写真を撮られた」と話している。彼によると多数の写真が撮られる流れの中で、捜査員は、デモ現場で拘束された若者の中から久保田さんを含む4人が連れ出し、デモで使用した横断幕を持つように命じ、写真を撮った。

写真が捏造された経緯について東京・日本記者クラブで説明する久保田徹さん(11月29日に北角裕樹撮影)

この久保田さんらが横断幕を持つ写真はその後ネット上に流出。久保田さんがデモに参加していたという嘘の情報が流れた他、国軍側のゾーミントゥン報道官が8月12日の記者会見で「デモに参加していた」証拠として提示した。このことについて久保田さんは「訳の分からないまま撮られた写真だ。そんな形で使われていたとは、帰国するまで知らなかった」と述べている。

この写真については、当初からミャンマーメディアから「デモ現場と背景が違うほか、逮捕された人物のみが写っていて不自然」として、当局の捏造を疑う声があがっていた。ただ、筆者が日本でこの写真に疑問を呈した際には「いくらなんでも捜査機関がそこまではやらないだろう」という声もあった。

しかし、こうしたミャンマーの捜査当局による証拠の捏造は数多く指摘されており、事情に詳しいミャンマー人は「国軍の常套手段」と説明する。 久保田さんの帰国後の証言で、捏造が確認された形だ。

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