北朝鮮のコロナ対策は過剰。中国との国境の川・鴨緑江の川辺で防護服を着て堤防修復作業をしている。2020年10月に中国側から撮影アジアプレス

◆今も体温チェック以外にコロナ判定の術なしか

中国で新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えているのを受け、国境を接する北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で国境が厳戒態勢に入っていることが分かった。12月23日に現地の取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン

両江道は鴨緑江と豆満江の上流で中国と国境を接する。そのため以前から越境、脱北、密輸が盛んに行われてきた。金正恩政権は中国でコロナ感染が広がり始めた2020年1月から国境警備を厳格化し、不法越境や密輸行為は軍法で裁き、許可なく国境に近づく者は銃撃すると布告していた。

北朝鮮では5月にコロナ感染発生を公式に認めた後、極めて速い速度で感染爆発が起こったとみられる。8月にはいったん落ち着いたようであったが、その後コロナに対する警戒が薄れ、経済悪化のため密輸や脱北が摘発される事例が相次いでいた。両江道の中心都市・恵山(ヘサン)市に住む協力者は現状を次のように解説する。

「中国でものすごい数のコロナ患者が出ているそうで、国境から100メートル以内に接近するなと言われている。道も通行禁止になり鴨緑江に近接する民家には、人民班長以外は出入りできなくなった。
※人民班は最末端の行政組織で地区ごとに20~30世帯程で構成される。町役場に相当する洞事務所からの指示を伝達し、住民の動向を細部まで把握する役割を担うのが人民班長だ。

朝鮮でも寒くなるにつれて風邪が流行し始め、防疫要員がコロナかどうか確認すると慌ただしく動いているが、体温検査以外に術が何もなく、正直、風邪なのかコロナなのか誰もわからない有様だ。症状が風邪と異なっていたり長引いたりした場合は、解熱剤を2日分支給して外に出るなと言われる。

ただ、脱北と密輸に対する取り締まりはさらに厳しくなり、統制措置を適当にしたり目をつぶったりする行為が発生しないよう、組織の責任者に引き締めを強化するよう指示が出ている」

◆中国側は北朝鮮からの流入を疑う

恵山市の対岸、吉林省長白県に住む中国人の協力者からも情報も入ってきた。

「長白地区でもコロナ感染症が急増していて、病院や医療施設は飽和状態だ。現在長白だけで100人以上の感染者が発生していると言われていて、政府は症状の重い患者は病院に隔離させ、軽症状者に対して自宅隔離させている」
※中国政府は12月中旬からコロナ感染者統計の公表を止めている。

長白県は交通の便が悪いこともあり、これまで感染者が非常に少なかった。そのため、突然の感染拡大の原因として、北朝鮮からのウイルス流入を疑う雰囲気が強いと協力者は言う。

公安当局では、北朝鮮から密輸などで越境してくる者を警戒して鴨緑江付近に人々が近づかないよう呼び掛けるとともに、国境付近への移動に対する取り締まりを強化しているという。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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