(参考写真)村の共同井戸で水を汲んで家路につく女性。燃料代節約のため沸かさずに飲む人が多い。2015年1月北朝鮮中部地方で撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)

◆ひと冬石炭150キロでは越冬無理

しかし「伝票」を通じた取引は、炭鉱での石炭引き渡しまでだ。そこから職場までの運搬は企業が自力で解決しなければならない。車両や燃料を調達する費用は結局、受け取った石炭を充当させるしかないため、実際に労働者が手にする石炭は150キロをかなり下回ると見られる。

また石炭配給が出るのは出勤している労働者本人分だけだ。扶養家族の分や退職した老人たちは、これまで通り自力で現金で購入しなければならない。

咸鏡北道出身の脱北者によると、石炭だけで煮炊き、暖房をする場合、1世帯でひと冬に1.5から2トンが必要だとのことだ。現地の取材協力者はまったく足りないと憤る。

「収穫が終わったのに食糧価格があまり下がらず、皆お金が無くて暮らしは極めて厳しい。さらに凍えて死ぬ心配をしなければならないのだ。石炭わずか150キロで、冬をいったいどうやって生きていけというのか」

◆石炭拾いに子供と年寄りまで炭鉱に

それでも、石炭配給が出たことで市場価格が大幅に下がったという。この協力者によれば、1トン当たり130中国元程度だったのが95元まで下がった。それでも買えない人が多く、炭鉱周辺では石炭と食糧を物々交換する商売も現れているそうだ。
※1中国元は約19円

「炭鉱には子供から年寄りまで、石炭を拾って持ち帰ろうとする人が大勢集まっている。恩徳(ウンドク)郡の梧鳳(オボン)炭鉱では、殺到した人を炭鉱の『糾察隊』(秩序維持組織)が取り締まり、拾い集めた石炭を回収していた。現場は殺気立っていて、泣き喚く人もいたし、喧嘩になって刃物沙汰まで起こって安全局(警察)の機動隊が出動している」

協力者は現地の混乱をこう説明した。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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