◆人権侵害の温床
北朝鮮の警察機関の留置施設で、拘禁された住民の逃走、自殺、死亡事故が発生し、施設の管理者や責任者の処罰問題に発展していることが分かった。アジアプレスが入手した<絶対秘密>指定の内部文書に記されていた。(石丸次郎)
新型コロナウイルス・パンデミックが発生した2020年1月以降、北朝鮮では過剰なコロナ対策と経済悪化に伴って社会統制が厳しくなり、社会安全局(警察)などの統制機関が些細なことで住民を逮捕拘留したり、令状なく家宅捜索したりすることが茶飯事になった。
各種の拘禁施設で死亡事故が多発しているという情報はこれまでも多かったが、今回アジアプレスが入手した内部文書では、警察機関が実態調査を行って逃亡、自殺、死亡する事故が起こっていることを金正恩氏に報告し、対応策の承認を受けたことが記されている。
◆秘密文書の中身は
入手した文書のタイトルは「敬愛する最高司令官金正恩同志の2022年11月20日批准課業 社会安全機関で待機室、抑留室、拘留場管理に対する批准課業」
社会安全機関とは警察のことだ。本文のポイントとなる部分は次の通りだ。( )内は筆者による補注。
「敬愛する最高司令官同志は2022年11月20日、社会安全機関で待機室、抑留室、拘留場の実態を全般的に了解(調査)し、逃走者、自殺者、死亡者をなくすための対策を徹底的に立て、今後、犯人管理を正さず逃走者、自殺者、死亡者を発生させた時は、管理者はもちろん、責任がある者も厳しく処罰することについて、批准課業(承認)をしてくださいました。」
文書からは、警察の拘禁施設で死亡・自殺・逃亡事故が相次いで当局の中で問題となり、調査して対策を立てて金正恩氏の承認を得なければならなくなった事情が推測される。
次のページ: ◆拘禁施設では暴行や拷問が横行... ↓
1 2