◆虚偽の修正を高市事務所が主導か
しかし、この修正そのものが虚偽だとして二回目の告発状が出された。
「赤旗」の取材に対して山添村支部の当時の事務担当者は次のように答えている。
赤旗:「パーティ券代は22万円分か?」
事務担当者:「そうだ」
これは完全に修正と矛盾している。
山添村支部の当時の会計責任者も「赤旗」の取材に対して、「山添村支部の19年分の収支報告書は私が作成しました。しかし20万円の領収書など見たことがない」と断言し、収支報告書の提出前に自民党奈良県連にも確認してもらったことにも言及している。
また、山添村支部の現在の代表者も会計責任者も「収支報告書が訂正されたことを知らなかった」と赤旗の取材で述べている。
山添村支部の当時の会計責任者は「赤旗」の取材に対して、収支報告書の訂正のきっかけが高市早苗事務所とのやり取りだったことを認めている。「新たに選挙管理委員会に提出した20万円の領収書は、最初の告発状が出された後に高市早苗事務所が発行したもの」とも回答している。
山添村支部の収支報告書が修正されたのは22年11月22日。それに対して、領収書が提出されたのは1月16日。2カ月近くも経ってから提出されたのはなぜか? 「赤旗」において、修正したこと自体が虚偽の可能性が高いこと等が報道されたのは23年1月15日号。つまり、報道を受けて領収書を作成した可能性を疑わざるをえない。
これら等の状況から、二度目の告発状では「虚偽の修正を高市事務所が主導して行われた」と結論付けている。
◆「姑息で悪質なので追加告発」
高市大臣らを二度にわたり刑事告発をした上脇博之神戸学院大学教授は次のように指摘した。
「通常、収支報告書を訂正するのは不記載した側です。ところが、この事件で訂正したのは、記載していなかった高市大臣側ではなく、記載していた側でした。私が高市大臣らを不記載罪で刑事告発したので、焦った高市側が、強い立場を利用して、山添村支部側の収支報告書を訂正させたのでしょう」
更には、高市大臣側が収支報告書を訂正できなかった事情を次のように推測した。
「赤旗日曜版は昨年9月に、高市大臣側が旧統一教会関連団体から計4万円分のパーティ券を2019年に購入してもらっていたとスクープ報道していました。その時、高市大臣側はそれを否定したのです。それなのに私の告発で高市側が収支報告書を訂正してしまうと、旧統一教会関連団体からパーティ券を購入してもらっていたのも真実だったのではないかと大騒ぎになるから、弱い立場の山添村支部側に虚偽の訂正をさせたのでしょう。事実なら姑息で悪質ですから、追加の告発をしました」
上脇教授の指摘に付け加えれば、高市大臣のパーティ券問題が報道された頃、岸田内閣の他の閣僚も「政治とカネ」問題を追及されていた。高市大臣だけでなく、政治家の多くがカネ政治資金の不正疑惑を報道されても謝罪をして修正したら終わりにしている。
また、そうしたことを容認している日本社会があることも現実だ。高市大臣の場合は、自ら修正するのではなく、弱い立場の支部に押し付けようとしているから悪質だと言わざるを得ない。
岸田内閣では、複数の閣僚に「政治とカネ」問題が発覚して辞任に追い込まれているにもかかわらず、国会で政治資金関連法を改正しようという声が聞こえてこないのはなぜだろうか。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。