◆処罰恐れ高級幹部も人糞背負って出勤

協力者の報告は続く。

「今年興味深いのは高級幹部たちの目の色が違うこと。道党や行政の幹部たちが、毎日我われと同じように人糞で作った堆肥を担いだり、 『クルマ』を引っ張ったりして出勤します。先頭に立っているところを見せなければがならないから。

以前は、期間中に1~2回やる程度でしたが、今回は毎日やっている。幹部たちは集めた人糞がどこで堆肥になるのかも分かっていないでしょうが、自分のノルマの分だけは先頭に立ってやっています。

けれど、実はそれが住民たちには困りものなんです。幹部が率先して毎日人糞集めをやるもんだから、融通が利かずむしろ負担が大きくなった」

3年前の新型コロナウイルス・パンデミック発生以降、金正恩政権は社会統制を厳格にした。とりわけ幹部に対しては、難局を乗り切るために率先して働くことを求めており、怠慢や形式主義など熱意が足りないとみなされた幹部は、地位はく奪や党からの除名など厳しい処罰が加えられている。この3年間、幹部の間では緊張が続いている。

◆労働党員は堆肥生産の先頭に立て

「職場や地域で生産した堆肥は農場に運搬します。例年は、農場の入口まで運んで積んでおくやり方でしたが、今年は企業や団体ごとに担当する田や畑が指定され、そこまで運ばなければならなくなった。当局に指定された農場まで距離が遠い場合は、運送のためのガソリンや車両の調達費用が負担になるので、摩擦が起こっています」

1月15日から、労働党員だけで組織する「堆肥生産突撃隊」という特別チームが作られたという。職場や団体の党員が堆肥生産の先頭に立ち、社会の見本となることが求められている。

これについて咸鏡北道(ハムギョンプクド)の党員の取材力者は、「党員も暮らしがしんどいのは同じなので、皆が負担を感じている。今、労働党の政策なんて信じる人は誰もない」と述べた。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

 

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