◆「鬼滅の刃」コスプレ少女、ダーシャの思い
ウクライナで「鬼滅の刃」のコスプレをする17歳のダーシャさん。アニメ・漫画の大ファンの彼女の父は、ウクライナ軍中佐だった。前線での任務中にロシア軍のミサイル攻撃で戦死。父への思いを胸に、ダーシャは心強くあろうとする。オデーサで取材したアニメ少女の第2弾。(玉本英子)
◆「日本のアニメは人生の意味も教えてくれる」
人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクター、竈門禰豆子に扮したコスプレ姿を、動画サイトに投稿するウクライナの少女がいる。 学生のダーシャ・ボンダレエバさん(17)は、日本のアニメ、漫画の大ファンで、「鬼滅の刃」のほか、「文豪ストレイドッグス」「未来日記」がお気に入りだ。 「日本のアニメは刺激的で、ストーリーが奥深い。人生の意味も教えてくれる」と話す。
ウクライナでは、日本のアニメと漫画が人気だ。南部の都市、オデーサにあるアニメショップ、「ヨロコビ」は、日本語の「喜び」が由来になっている。店内に並ぶアニメのグッズや漫画の翻訳本の数に圧倒される。
ロシア軍の侵攻は、アニメファンにも暗い影を落とす。コスプレ姿で来店していた学生は、自宅アパート近くにミサイルが炸裂し、その爆発音がいまも耳から離れないという。 ウクライナでは、誰もが家族が負傷したり、友人が兵士として戦っていたりと、戦争の現実がのしかかる。 「ヨロコビ」の店員は言う。 「お客さんが店に入ると、それまで悲しい顔だったのに、アニメと漫画を見て、幸せそうな表情に変わります。希望を感じてくれるのです」
◆ウクライナ軍将校の父、ミサイル攻撃で戦死
ダーシャさんの父、ヴィターリーさんは、ウクライナ陸軍・第28独立機械化旅団の中佐だった。7月末、戦闘が続く南部ミコライウでの任務中、ロシア軍ミサイルの直撃を受け、部隊司令官らとともに戦死した。
ロシア軍の侵攻が始まったとき、父はこうつぶやいた。 「この戦争は、過酷なものになるだろう……」 戦闘が激化し、家に戻ることはなくなったものの、家族を気遣う携帯メールをよく送ってくれた。 「元気でいるよ」 それが父からの最後のメッセージとなった。亡くなる3時間前のことだった。 母のイリーナさんはヴィターリーさんの死を受け入れられず、洗面所の歯ブラシや下駄箱の靴もそのままにしていた。