◆シリアでも家屋倒壊 犠牲者多数
2月6日未明、トルコ南部を震源地として発生した大地震は、隣国シリアでも大きな被害を受けている。北西部イドリブは、震源地のひとつ、ガジアンテップ県から約140キロ南西。地元記者とネット電話を通して現地の状況を聞いた。(玉本英子)
地震が起きたのはシリア時間で午前4時をすぎたころ。住民の多くは家で就寝中だった。
ムハンマド・アル・アスマール記者(38)は地震発生時の様子をこう語る。
「自宅は4階建てアパートの1階部分です。経験したことのない激しい揺れで、縦揺れと横揺れに襲われました。すぐに妻と子どもたちと外へ出ました。公園へ向かう者もいましたが、地震発生時は大雨だったうえに、冬の寒さのなか、屋外にいられず、妻子とともに自家用車の中で一夜を過ごしました」
◆損傷した家屋の住民 倒壊恐れ家に近づけず
ムハンマド記者の同僚は、自宅の一部が崩壊、別の家に住んでいた親族7人が建物の下敷きになり亡くなった。家屋が倒壊した住民らのために、地元行政当局は緊急に仮設キャンプを設置、内戦の国内避難民キャンプでも被災者の受け入れを始めた。壁に亀裂が入り、損傷した家屋の住民は倒壊を恐れ、家に近づけないという。
地元市民のグループやボランティアらが食糧などの配布をすすめているものの、十分ではなく、ムハンマドさん一家は今も車の中で、パンと肉の缶詰で空腹をしのいでいる。
◆救出作業は難航「重機、燃料がまったく足りない」
イドリブの保健当局のこれまでの集計では、死者1050人、負傷者3000人以上(現地時間7日午後11時半時点)。現在も救助隊らによる救出作業が続いているが難航している模様だ。
市民組織、シリア民間防衛隊副局長のムニール・アル・ムスタファさん(40)によると、全壊した建物は210棟以上という。
「あまりにも多くの建物が損傷しているため、瓦礫の中に閉じ込められている何百人もの人たちを助け出すことができません。重機、燃料がまったく足りない」と話す。
時間が経つほど生存率が低くなり、死者数がさらに増える可能性があるとムニールさんは懸念する。
◆内戦下の疲弊地域 被害拡大懸念
シリアでは10年以上にわたり内戦が続いている。北西部イドリブは反体制派が実効統治し、武装組織各派がアサド政権の政府軍と対峙する。住民は、空爆の恐怖や生活困窮に苦しんできた。トルコ国境近くに点在する国内避難民キャンプには200万人が暮らす。トルコからの人道支援を受けてきたキャンプも少なくない。インフラも脆弱ななか、地震の被災者を受け入れる余裕が十分でないのが現状だ。
「これまでイドリブでは支援の多くをトルコに頼ってきましたが、今回の地震で大きな被害を受けているので、私たちは後回しにされてしまうのではと心配です。シリア北部地域への国際支援が緊急に求められます」
ムハンマド記者は訴える。