◆つじつま合わぬ数字だらけ
松井一郎大阪市長が代表を務めていた時期の「大阪維新の会」(以下、維新の会)が、政治資金パーティの収入を過少申告し政治資金規正法(以下、規正法)違反したとして、松井市長と会計責任者の岩木均大阪府議会議員の二人が大阪地検に刑事告発されていた。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
告発状によると、維新の会は2019年9月12日に政治資金パーティ「大阪維新の会懇親会」をロイヤルホテルの光琳の間で開催した。参加費は、一人2万円だった。維新の会の政治資金収支報告書(以下、収支報告書)には、参加者が5862人で収入が1億1724万円だったと記載されている。
しかし、この光琳の間は、ロイヤルホテルの公式サイトによるとビッフェスタイルで最大2000人収容と書かれている。維新の会が収支報告書に記載している5862人は、この会場に入れたのだろうか。
もし、2000人の収容なので追加で100人、若しくは200人ぐらいだったら入るかもしれない。しかし、倍以上の人数を収容することは無理だと告発状では指摘している。
◆音喜多議員が「来場者数の3倍以上チケット購入者がいそう」とポロリ
音喜多駿参議院議員は自身のブログで、問題の政治資金パーティの「秘密」を書いていた。議員のブログより。
このパーティの様子を日本維新の会所属の音喜多駿参議院議員は、2019年9月13日のブログで次のように記している。
「今年の来場者は3,000名を超えて約4,000名いたそうな…。チケットの番号は10,000までありましたから、来場者数の3倍以上チケット購入者がいそうですね」
音喜多議員の記述通り4000人だったとしても、5862人には大きく届かない。仮に4000人だったとしたらパーティ券収入は8000万円。収支報告書とは2000万円以上の開きがある。
さらに問題なのは、チケットの番号が10000まであったという部分だ。文脈から考えると、1万枚以上パーティ券が売れていたと考えることもできる。
もし、パーティ券が1万枚売れていたとしたら、売り上げは2億円。収支報告書に記載している1億1724万円とは大きな開きがある。この8000万円以上のお金は、いったいどこへいったのか?
音喜多議員の記述通り来場者が4000人だったとしても、6000人はパーティ券を購入したにも関わらず、パーティには参加しなかったということになる。本来、パーティ券収入というのはパーティに参加した対価のことなので、参加しなかった購入したのに参加しなかった分は、パーティ券収入ではなく寄付として記載しなければならない。維新の会は寄付があったにもかかわらず寄付を記載しなかった、つまり寄付の不記載ということになる。
◆維新と音喜多議員は質問に回答せず
刑事告発された岩木均大阪府議会議員。HPより。
この一連のパーティ問題について維新の会と音喜多議員に質問をしたが、期日までに回答はなかった。
刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授は次の様に指摘する。
「音喜多議員は日本維新の会の国会議員なので、大阪維新の会のパーティ券の販売枚数についてブログで嘘を書くとは思えません。そこで書かれている数字を前提にすれば、販売収入は少なく見積もっても2億円にはなっているはずです。にもかかわらず収支報告書に記載されている収入額は1億1724万円でした。
あまりにも大きな差額で、少なくとも8170万円を超える収入が裏金になっている可能性があり、それが何に支出されたのか不明のままです。事実なら悪質な規正法違反の虚偽記入なので、昨年9月末、松井代表と会計責任者の岩木府議を大阪地検に刑事告発しました」
政治団体に1円以上の寄付(献金)をした場合、寄付者の名前などの明細が収支報告書に記載される。しかし、パーティ券収入の場合は20万円以下であれば記載しなくてもよい。事実上、寄付の隠れ蓑となっており、制度上の不備だという指摘が以前からなされている。
維新の会は「身を切る改革」をスローガンに勢力を大きくしてきた。しかし、この告発状が指摘していることが事実ならば「身を肥やす改革」と言われても仕方ない。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。