政治資金規正法違反などで刑事告発された富山県市議会議員の久保大憲氏。HPより。

政治資金規正法(以下、規正法)で決められた寄付の上限を超えた額の寄付し、その指摘を受けた後に虚偽の修正をしたとして、自民党の富山県県議会議員の奥野詠子氏と自民党の富山県市議会議員の久保大憲氏の二人が、富山地検に2月に政治資金規正法違反などの疑いで刑事告発されていたことが分かった。二人は夫婦で、上限を超えた寄付を「記載ミス」と主張しているが…。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆「夫婦は同じ生計なので200万→100万ずつだったと訂正」という常識外れ

奥野氏は2019年4月7日の富山県議選挙に立候補し当選した。この時の奥野候補の「選挙運動費用収支報告書」によると、同年1月20日に「自由民主党富山県富山市第九支部」(以下「第九支部」)から200万円を受け取ったと記載されていた。

この第九支部の同年分政治資金収支報告書(以下、収支報告書)には、夫の久保氏から同じ日に200万円の寄付を受け取ったと記載されていた。第九支部の代表は奥野氏であり、夫の久保氏は、奥野候補の出納責任者でありながら、第九支部の会計責任者でもある。

告発状によると、久保氏の目的は、奥野候補に寄付することであり、規正法では、一個人が公職の候補者にできる寄附額は上限が150万円と決められているので、久保氏個人の200万円の寄付は違法となる。

この違法な200万円の寄付について今年2月11日付の読売新聞が「富山市議迂回寄付か 妻の県議に 上限超える額 団体経由」という記事を出している。久保氏は読売新聞の取材に対して「記載ミス」「同一生計から折半した」と述べている。

要するに、夫婦でもある奥野氏と久保氏が共同で管理している家計から200万円を第九支部へ寄付をしたという意味だろう。だから、実際は二人で200万円なので、一人当たり100万円の寄附となり法律には抵触していないという。常識外れの言い分だ。

削除訂正された「選挙運動費用収支報告書」。

◆久保氏は200万の「寄附金控除」申請までしていた

読売新聞の取材後、久保氏は第九支部に100万円寄付し、奥野氏も第九支部に100万円を寄付したと、収支報告書訂正して富山県選挙管理委員会(以下、富山県選管)に提出した。しかし、告発状では、この修正についても違法性を指摘している。

奥野氏も久保氏も現職の政治家だ。ましてや、久保大憲氏は第九支部の会計責任者でもある。収支報告書には、寄付の実態通りに記載しなければいけないことを知らなかったはずがない。

寄付をしたのも久保氏であり受け取った支部の会計責任者も久保氏だ。奥野氏と久保氏が別々に100万円ずつ寄付したなら、その通りに記載すればよいだけだ。

更には問題なのは、久保氏は「寄附金控除」まで富山県選管に申請していたことだ。その控除額も200万円なのである。会計責任者である久保氏が、収支報告も控除申請も「記載ミス」するなどということが起こりうるだろうか? これらのことから告発状では、収支報告書の訂正が虚偽記載と指摘している。

収支報告書虚偽記入罪などで刑事告発された富山県議会議員の奥野詠子氏。HPより。

◆訂正は虚偽で収支報告書虚偽記入罪の疑い

奥野氏と久保氏を刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授は次のように指摘した。

「奥野氏も久保氏も議員であり、規正法で立候補者に寄付できる上限が150万円だとわかっていたから、第九支部を迂回して200万円を寄付したのでしょう。しかし、迂回しても久保氏の寄付の目的が奥野候補の選挙資金のためなので規正法違反です。

迂回寄付については規正法違反の収支報告書虚偽記入罪にも該当しますので、第九支部の代表の奥野氏と会計責任者の久保氏を富山地検に告発しました。

200万円の寄付については『二人で100万円ずつの寄付だった』と収支報告書が訂正されましたが、この訂正は真実ではない可能性が高く、これも収支報告書虚偽記入罪に該当します。反省していないので、2人をさらに告発しました」

これまでも多くの政治家が、政治資金について問題を指摘されると訂正して終わり、で済ませてきた。政治資金に関する違法行為は刑事罰の対象であることは言うまでもない。

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

★新着記事