(参考写真)市場でコメを売る住民たち。売り場には様々な種類の穀物が豊富に並ぶ。2013年9月咸鏡北道清津市。撮影アジアプレス

◆市場での販売禁止の副作用

以下は、協力者との一問一答。両江道の協力者二人の回答をまとめた。

――市場で食糧を売れないなら、人々はどうやって買うのか。職場の配給と「糧穀販売所」での販売分ではまったく足りないはずだが。

コメ商人らは自宅で販売を続けている。昨年秋に取り締まりが非常に厳しくなり、商人の家まで巡回して監視したが、買える場所がなくなって不安が広がり、今では、当局は自宅での売買には目をつぶっている。市場で食糧の陳列販売は許されない。

――なぜ商人の自宅取引が黙認されるようになったのか?
国がまともに人民に食糧を供給できていないのに市場の取引まで禁止したので、老人だけの世帯や、「軽労働」(病弱者や障害者など通常勤務を軽減された人々)、 扶養家族の分をどうやって入手しろというのか。問題が一気に発生した。食糧を買えず飢える人も出ているので、商人の自宅での売買取り締まりを緩和したようだ。(咸鏡北道の協力者も同じ内容を伝えてきた)

――困窮した住民にはどのような影響が出ているか?

(市場では)これまではお金がなくても知り合いの商人なら物を預けてツケで買えたし、なんとかその日暮らしができた。『糧穀販売所』では一切ツケがきかないし、値段交渉もできない。市場でツケで買ったコメやトウモロコシで食べ物(餅など)を作って売って、その利ザヤで食いつなぐ人も多かったのに、そんな商売自体をできなくしてしまった。

――餓死者が発生しているという情報があるが?
現金収入がない。ツケで食べ物を買うこともできない。それで農村に行って物乞いする人までいる。私の周囲にも一日に1食、2食で耐えている人が少なくない。そんな人が衰弱して死んでいる。でも当局は飢え死にとは絶対に言わず、病死として処理している。

◆当局はどう説明しているか?

――当局は市場での販売禁止をどう説明しているのか?

国家の食糧を不法に取引して手に入れ、価格を釣り上げて市場で売る行為や、金持ちが市場で買った食糧を高値で転売するのをなくすのだと言っている。それから企業や農場が必要資材を買うために食糧を売って現金化する現象もすべてなくすということだ。

――金正恩政権の狙いは何だと思うか?
今、商売がまったくだめなので誰もが暮らしが厳しい。多くの人が「糧穀販売所」での販売に頼り、職場の配給を気にしている。配給を出してくれる職場に入ることを考える人がとても増えた。政府はそれを狙って市場の食糧販売を統制しているのだと思う。3月末に中国から食糧が大量に入って来るという情報が流れ、多くの人が期待している。

金正恩政権は食糧流通を市場から奪って国が独占しようとしている。その成否の行方はわからないが、「食わせてやるから言うことを聞け」という「カロリー統治」への移行が進行中なのは確かなようである。

※アジアプレスでは中国携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

 

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