◆身内に甘すぎる維新の責任は?

今井氏は貝塚市が地盤で3期の市議会議員を経て大阪府議に。自民党から維新に移った経歴を持つ。HPより

2021年8月、週刊新潮の一本の記事が大阪政界と維新にショックをもたらした。大阪府議会議長を務めた維新の大物・今井豊氏が、当時貝塚市長だった藤原龍男氏から多額の現金を受け取りながら献金処理をしていなかったのだ。この報道を受けて今井氏は府議を辞職、大阪維新の会から除名された。ところがその後、大阪維新の会は、違法献金疑惑の解消がされたとして、昨22年3月末に除名処分を撤回した。維新が身内に甘いのはいつものことだが、腑に落ちないことばかり。筆者は資料を調べなおし、今井氏本人に直接取材したところ、違法献金疑惑は解消されるどころか深まるばかりだった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

2021年8月の週刊新潮の報道によると、今井豊氏は大阪府議会議員だった2009年に30万円、13年に20万円、21年に50万円を、当時貝塚市長だった藤原龍男氏(無所属)から受け取った。週刊新潮の取材を受けて今井氏は大阪府議会議員を議員辞職し、藤原市長は22年1月に予定されていた貝塚市長選挙への立候補を断念した。

◆今井氏を直撃してみたところ

事実を確認するために、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)を大阪府選挙管理委員会(以下、大阪府選管)に情報公開したところ、今氏元議員による「訂正願い」が出されていなかったことが分かった。

いったいどうなっているのか。

とにかく今井元議員に直接、話を聞きたかった。だがすでに政治家を引退しているため、今井元議員の政治団体などが現在も存在しているかどうか分からない。質問状を携えて後援会事務所などを訪ねて歩いたところ、ある政治団体の一つの住所の建物で今井元議員に会うことができたので、質問状を渡した。22年6月のことだ。

その後、今井元議員とのやり取りはショートメールですることになった。まず確かめたかったのは、21年度に受け取った50万円を収支報告書に記載しなかった件だ。次のような回答が送られてきた。

「献金は21年2月で22年3月末期までに報告義務ありで1月報告済」(原文ママ) 

藤原龍男後援会から今井豊後援会に50万円の寄附があったことが、22年末に大阪府選管が公開した双方の収支報告書で確認できた。

◆他にも隠し献金が多数と告白

政治資金問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授は次の様に指摘する。

「09年の30万円、13年の20万円の全額を2017年までに使い切っていれば、21年に公開されていた3年分の収支報告書を訂正する必要はありません。しかし、支出を記載しない裏金として使ったわけですから、何に使ったのか説明する必要があります。仮に計50万円を使いきっていなかったのであれば、その分は翌年に繰り越され続けるので、3年分の各収支報告書は訂正しなければなりません」

先の今井氏の回答には、1回目の30万円、2回目20万円の寄附については触れられていなかったので、ショートメールで再度質問した。

「13年前と9年前の献金は政治団体への寄付として認識です。市長側も同様です。同様の献金は多数あり報告済です」(原文ママ)

なんと、今井氏自ら、報道されている以外にも献金が多数あることをほのめかしたのだ。 当時、大阪維新の会の法律顧問(22年3月で顧問契約解消)でもあった橋下徹氏にヒアリングを受けていたことも告白した。

「21年11月17日に橋下綜合法律事務所にてヒアリング結果の意見書が提出されていますので参考にして下さい」

今井氏にその意見書の公開を依頼したところ、「そちらから法律事務所に請求して下さい」と回答があった。

◆藤原元貝塚市長の反応は?

大阪府知事時代の橋下徹氏とのツーショット。HPより

藤原元市長にも、3回の金銭授受について質問した。

「09年の30万円は(法律における)保存期間を過ぎていましたので私が直接大阪府に出向き未記入については口頭にて報告を行い了承を得ています。13年については寄付の事実は無くその旨を大阪府選管と今井豊氏に伝えています(原文ママ)

なんと、金銭の授受は2回だけだったというのだ。

今井氏が筆者に回答した「同様の献金は多数あり」という内容については「(報道されている)他には寄付行為はありません」と回答。

これについて、前出の上脇教授は次のように指摘した。

「藤原元市長と今井氏の説明が食い違うなら、維新は両者の言い分を聞いて、どちらの説明が真実なのか、証拠を提出させるなどして調査しなければ、除名処分を解除することはできないはずです。それなのに、いまだに両者の言い分が食い違うのは、維新がまともな調査もしないで除名を解除したのではないかとの疑念が生じます」

◆維新の会、橋下綜合法律事務所の対応

今井氏からの回答では意見書の提出先は分からないが、事の成り行きを考えると、橋下事務所から大阪維新の会に対して意見書が提出されていると考えるのが自然だ。そこで大阪維新の会に対して質問状と意見書の公開要請を出したが、期限までに回答はなかった。

今井氏の処分撤回について大阪維新の会は 「今井氏からは週刊誌報道時点では金銭授受に関し記憶があいまいなままでの不適切な発言があったが、その後確認できる範囲において適切に処理がなされたと聞いている。以上から処分を撤回することが適当と判断」 と回答した。

ヒアリング結果の意見書の公開要請と質問を橋下法律事務所に22年5月、23年2月の二度、送ったが、回答は期日までになかった。

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