<北朝鮮内部調査>地方で飢饉の様相「5月に入り飢えと病気で大勢死んでいる」(1) 国家保有食糧が払底か
飢えで多くの死者が出ているという情報が、地方都市から続々届いている。2021年以降、老人世帯や病弱者など一部の脆弱層に死者が出ていたが、事態がさらに悪化しているのは間違いないだろう。情報の内容は非常に具体的だ。連載の三回目は、北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の状況を報告する。現地住む3人の取材協力者が5月中旬以降に伝えてきた。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆両江道の恵山市で収集調査
恵山市は鴨緑江上流に位置する中国との国境都市である。両江道の道庁所在地で人口は推定20万人程。山かち寒冷なため農業には不向きだが、中国吉林省長白県との貿易が活発で、物流拠点として北朝鮮の中では生活水準の高い地域であった。ところが、2020年1月に新型コロナウイルス・パンデミックが始まると、すぐに国境が封鎖されて貿易は完全にストップ。他地域との移動も強く規制され、住民の暮らしは大打撃を受けた。
協力者のB、C、Dさんの報告は、同じ恵山市に住むこともあって類似した内容もあったが省略せずに記す。彼らとの通信には搬入してある中国のスマートフォンを使っている。
◆5月に入って近隣で4人餓死した
――恵山市の暮らしは今どうですか?
B ポリコゲ(春窮期)に入ってから、困窮して栄養失調になる人がとても増えています。ちゃんと食べられず貧血になって、外出できない人もいます。5月に入ってから、私の人民班では4人亡くなりました。栄養失調なのに病気で死んだことにされます。飢え死にしたのと同じなのに。栄養状態が悪いので結核患者もたくさん発生していますね。コチェビ(浮浪者)も急に増えました。とても深刻です。
――現在、農村動員のただ中です。影響はありますか?
B 人民班で農村動員を毎日のように組織していますが、最近は生活が苦しくて20%程が動員に出て来られないのです。なんとか生きようともがくのだけれど、商売をしようにもお金はないし、賃労働をしようにも力が入らない。(そんな人が)死んでいます。
※毎年4月中旬から、全国で都市住民が援農作業に動員される
※人民班 最末端の行政組織で、概ね20~30世帯程で構成。町役場に相当する洞事務所からの指示を伝達し、住民の動向を細部まで把握して当局に報告する役割を担っている。
※賃労働 建設現場や薪集め、荷物運びなどで日銭を稼ぐ。組織的に行うと取り締まり対象になる。