◆国家保有食糧が地方で払底か
このように、金正恩政権は強引に市場を抑えて「食糧専売制」への転換を図ったのだが、それは国が責任を持って確保すべき食糧量が増えたことを意味する。5月に入り、各地から飢饉の広がりが伝わってきているのは、国家保有食糧が底をついた地域が増えているためだ。つまり、「糧穀販売所」や国営企業で、食糧を供給できない事態が発生しているわけだ。
ただ、アジアプレスが直接調査できたのは、咸鏡北道、両江道、平安北道に限られており、他都市の状況は現時点で把握できていない。中国の税関当局が発表した3月の貿易統計によれば、購入したのか支援を受けたのかは不明だが、北朝鮮は中国からコメと小麦粉を計10万トン以上輸入している。
首都平壌は政権にとって重要な優先配給対象であるため、中国からの輸入食糧が優先的に供給されて、餓死者が出るような深刻な状況にはないかもしれない。対応を後回しにされた地方都市で飢饉が発生しているものと推測している。
付言すると、北朝鮮第二の都市である咸興(ハムン)の人命被害がもっとも大きいという未確認の情報が、北朝鮮国内で広がっている。
以上のような前提を踏まえて、各地から届いた厳しい現状報告を読んでいただきたい。(続く 2へ >>)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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