◆石綿飛散「隠ぺい」分析法採用

同省は文献調査及び実証試験から、「除じん性能を有する電動工具には、十分な石綿等の粉じん発散防止効果があることは明らかである」とした。

だが文献調査は「リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)」という人造繊維についてのデータで、実際に石綿繊維について調べたものではない。「石綿ではないが、石綿に近い状態である」と説明がつけられているだけで、実際に石綿繊維に適用できるのかどうかを示すデータなど裏付け資料はとくに提示されていない。会合でもそのあたりの説明はなかった。また石綿含有建材を切断する際の飛散データは多数存在するはずだが、そうした論文に言及しないのも不自然さを感じる。なにか都合の悪いデータでもあるのだろうかと勘ぐりたくなる。

さらに問題なのは実証実験である。

ことし2月と3月に計3日間実施した実証実験では、石綿含有スレート板(クリソタイル4.3%、アモサイト0.4%含有)の切断、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(クリソタイル2.8%、アモサイト6.6%、クロシドライト4.1%含有)の切断、石綿含有塗材(クリソタイル0.8%含有)の研磨はく離について、それぞれ「湿潤なし+集じん機なし」、「湿潤なし+集じん機あり」、「湿潤あり+集じん機なし」について調べた(塗材の研磨はクリは「湿潤あり+集じん機なし」未実施)。それぞれ作業者の口元での石綿濃度を測る「個人ばく露測定」を調べた。また各実験を2回おこない、それぞれ出力の異なる集じん機(吸気能力95Wと300W)を使った。

その結果から、同省は「実証試験結果を踏まえると、除じん性能を有する電動工具の使用は、石綿等の湿潤化と同等以上の粉じん発散抑制効果を有するものであると認められる」と結論づけた。

この結論には2つの問題がある。

1つは実験時に石綿繊維を調べる分析法として、“悪徳業者御用達”といわれる「位相差・分散顕微鏡法」を採用していることだ。

この分析法は、石綿飛散が問題になった際にこれを使うと「飛散してないことにできる」と有名でデータ偽装に重宝されたとされる。

兵庫県立健康環境科学研究センターの元研究員として、多数の石綿除去現場で測定・監視にかかわってきた小坂浩氏は、かねて「分散染色法は石綿濃度を実際の10~100分の1に過小評価する」と指摘してきた。

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