都市住民の窮乏が続いている北朝鮮の地方都市で、凶器を使った強盗事件が多発して住民の間で恐怖が広がっている。軍兵士によるたかりや強盗も頻発しており、安全局(警察)が凶悪な場合は発砲して鎮圧せよと指示を出したことが分かった。咸鏡北道(ハムギョンプクド)の取材協力者が6月後半に伝えてきた。(カン・ジウォン)
◆刃物で脅し自転車、電話機奪い、身ぐるみ剝がす
現在、咸鏡北道、両江道(リャンガンド)などの中国との国境地域では、午後9時以降は通行が禁止されている。本来は、夜陰に乗じて中国に越境、脱北、密輸を取り締まるためであったが、最近はさらに強盗犯罪の防止も大きな課題になっているという。
「30分の猶予時間を過ぎた夜9時半以降は通行している者はすべて検挙される。軍人も取り締まりの対象になっている。首や脇腹に刃物を突き付けて荷物や携帯電話を奪い、着ている服まで剥がすので、暗くなると外に出るのが怖い」
会寧(フェリヨン)市に住む取材協力者A氏の弁だ。A氏は、近隣で白昼に起こった強盗事件の例を伝える。
「6月後半のある日の午後に、郊外から自転車に乗って市内に戻る途中の男女が強盗に遭った。抵抗した男性が頭を石で殴られて気を失い自転車と荷物をすべて盗まれた。
最近の強盗はチームで動いている。人が来ないか道に見張りを立てて襲い自転車ごと強奪する事件が数多く発生している。恐ろしくて農村と市内を行き来する人は3~5人以上で一緒に行動している」
◆凶悪犯は発砲して鎮圧せよと指示
凶悪犯罪の増加に対し当局も手をこまねいているわけではない。6月下旬、A氏の住む人民班の会議に、警察などの公安関連機関の幹部が派遣され、取り締まりに積極的に協力するように指示があったという。
どこの地区でも、人民班が管理する警備哨所(検問所)を設置されているが、当局は、強盗や反社会主義的な行為をする者を捕まえるために、地区に出入りする人のチェックを厳しくし、集団行動をしている者がいたら通報しろと指示されたという。
また安全局では昼夜を問わずパトロールの人員と回数を増やしているが、「犯人が凶悪な場合は、発砲して鎮圧せよと指示が出たそうだ」とA氏は言う。