◆なぜ咸興が悪いのか?

それでは、なぜ大都市の咸興の状況が悪いのだろうか?

「人口が多く農村が近くにないためだ」と、複数の協力者が、口を揃えて説明する。

実は1990年代後半の大飢饉の際も、咸興では他都市よりずっと多くの死者を出している。咸興は化学や繊維関連の大工業都市だ。従業員数が5000人を超えるような大工場が数多くある。

90年代後半、経済麻痺によって社会パニックが発生した北朝鮮では、食糧配給制度がほぼ破綻。工場労働者が多い咸興では、短期間に大勢の人が飢えに直面することになった。近郊に農村が少ないため、流入する食糧量にも限りがあった。

◆個人の経済活動制限が打撃に

金正恩政権はコロナ防疫を名目に人とモノの移動を強く制限した。また個人の小ビジネスや非公式の賃労働を「非社会主義的行為」として強く取り締まった。

そのため、大部分の都市住民は現金収入が激減し、困窮に喘ぐようになった。咸興は人口が多く農村が遠い。そのため打撃を受けた人が多かったものと考えられる。

なお、咸鏡北道(ハムギョンプクド)の清津(チョンジン)市、金策(キムチェク)市も、餓死者が多数発生し、犯罪が増加するなど事態は深刻だという未確認の情報が拡散している。

※アジアプレスでは、中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 制作アジアプレス

 

 

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