◆財布の中まで検査し無慈悲に没収

「布告」が出て以降、どのような取り締まりが行われているのか、両江道(リャンガンド)に住む取材協力者は次のように伝えてきた。

「市場では抜き打ちの検査を始めた。中国元の使用を少しでも疑われると、持ち物や財布の中まで検査し、外貨が見つかれば無条件に没収している。

これまでは、(没収されても)人を立て役人に頼めば、内貨で計算して返してくれたが、もう通用しなくなった。無償没収だ。特に『トンデコ』(両替商)が標的になっていて、家宅捜索まで受けている。8月13日には、市場で中国元を没収された人たちが泣き喚いて騒ぎになった。今すぐに銀行に行って(内貨に)換えて来ると言って没収を免れた人たちもいる」

地方の銀行では、外貨を内貨に両替する業務を以前から行ってきた。たが交換レートが市中の闇レートよりかなり悪い上、名前などの個人情報を記さねばならず、外貨を保有していることを当局に知られたくなくて、銀行で両替をする人は少なかったという。

「当局の方針は、外貨があれば銀行で両替して内貨を使えということ。外貨で物を売買することはできない。例外は国営の『糧穀販売所』くらいだ。外貨取り締まりで多くの人が動揺している。朝鮮のお金はいつ紙クズになるかわからないから死んでも外貨を離さないと考える人がいる一方、あまりに取り締まりが厳しいので、どうしようか悩んでいる人も多い」

北朝鮮内の空気を、協力者はこのように説明した。

※アジアプレスでは、中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。 続く2 >>  

北朝鮮地図 制作アジアプレス

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