◆市の認識不足で対応に遅れ
同社は「石綿飛散の可能性があることをしっかりと説明できていればよかったのですが」と不備を認める。しかし29日の報告で同社は「石綿飛散した可能性があるんじゃないか。(石綿を)含有したものが飛んだ可能性があるのではないか」とも言及したという。ただし「石綿ではないかもしれない」などとも話したため、誤解を招いたかもしれないと反省していた。 いずれにせよ、石綿除去を含む工事である以上、最初の報告を受けた段階で市が石綿飛散の可能性に気づいて当然のはずだ。 そう筆者が問うと、「当時は断定できる材料がなかった」などと市は繰り返した。だが、必要なのは断定ではなく事実確認だ。そして、市がそれをおこたったことが問題なのだ。 そういったことを改めて指摘したところ、ようやく市は「反省すべき点はあるかと思います」と対応の不備を認めた。 市の認識不足による初動の遅れは、今回の問題で大きな影響をおよぼしている。 まず28日にすぐ現場を確認していれば、粉じんや清掃に使ったぞうきんなどを採取して調べて石綿の有無を分析できたはずだ。元請けも石綿の飛散事故対応が初めてだったため、どうしてよいかわからず、試料採取の機会を失った。2006年の新潟県佐渡市・両津小学校における飛散事故では県が児童らが当日着ていた服をビニール袋に入れて取っておくよう求めたことが石綿ばく露を裏付けた。今回は新潟市の初動が遅れたため、そうした事実確認もできなくなった。また室内空気の測定も本来すぐ実施すべきだったのに、1週間以上遅れた。 28日の清掃が適切だったのかも不明。本来なら同日に施設の使用中止を決断すべきだったのが1週間以上も遅れた。実際に石綿飛散があれば、それだけ子どもたちがばく露した期間も増えた可能性がある。 もう1つ、きわめて重大なのは、市は10月11日から保育園の利用を再開するというのだが、安全確認が不十分なのだ。 すでに述べたように6日に園舎内外で計6カ所(うち園舎内3カ所)を測定した。その結果、空気1リットルあたり最大で0.3本の石綿を含む可能性のある繊維が検出された。ところが市は石綿濃度までは調べなかった。 7日に保護者説明会を開催。そこで測定結果についても質問が出た。現場にもっとも近い、毎年測定している箇所で今年夏に同0.42本だったことから、市は「一般大気中の測定値と比べても低い」などと説明し「納得していただけました」という。