◆市の不作為で法違反を“誘発”か
まず(1)だが、今回の修繕工事は2022年2月に同4月以降、4年間で3億4650万円(税込み、修繕費別)で契約した「区役所庁舎等市有建築物保全サポート業務」という、区役所やまちづくりセンター、出張所など市の100カ所近い施設を点検・修繕するメンテナンス業務の一環である。この業務で3カ月に1回、自動ドアを点検することになっていた。 6月の点検で修繕の必要が報告され、市は7月24日に修繕を指示。その結果、すでに述べたように9月16日に部品交換がされた。 メンテナンス業務や設備工事では、しばしば予期せぬ石綿が見つかるものではある。しかし、本来なら施工前に調査が必要である。労働者や住民に対する飛散・ばく露を防止する労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)や大気汚染防止法(大防法)では、建物などの改修・解体工事の前にあらかじめ石綿を調査し、施工部位の場合は適正な方法で除去するよう義務づけている。 直接触らず振動もない場合、対策までは不要だが、その見極めのためにも石綿調査は必要だ。市の東区市民部総務企画課は「自動ドアの点検口から天井裏を見ると、広範に吹き付け材があった。鉄骨だけではないと思います。自動ドアの機械の内側も吹いてあった」と話しており、石綿調査が必要な作業だった可能性が高い。 実際に石綿調査がされていれば、調査報告書や分析結果が存在するはずだ。ところが市が報告書の写真を見て気づいたことから、法令にのっとった事前調査はされていなかったとみられる。 市は7月の修繕指示で、石綿の事前調査を実施することを求めず、費用負担もしていなかった。その理由は「アスベストの関連ではない」「吹き付け材があるという認識が(報告書の)写真を見るまでなかった」(市建築保全課)というもので、発注に問題があったことを認めた。 石綿が存在するかどうかはそもそも調査をしなくてはわからない。また市は過去に有資格者による網羅的な調査をしたわけでもない。にもかかわらず、石綿は無関係と思い込んで施工の指示をしたことに問題がある。