2018年に開催されたパーティでは河野太郎氏がスビーチ。左が岡本議員。岡本議員のHPより

2018年と19年の計2回の政治資金パーティを開催していたにもかかわらず、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載していなかったとして、公明党の岡本三成衆議院議員(東京12区)とその会計責任者の二人が、政治資金規正法の不記載罪に相当するとして、今年1月に東京地検に刑事告発をされていたことが分かった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆河野太郎大臣、太田昭宏前代表も参加したパーティなのに不記載

告発状によると、岡本衆議院議員は2018年6月11日に政治資金パーティ「岡本三成君を励ます会」(以下、「励ます会」)を開催した。しかし、岡本議員が代表を務める政治団体「三成会」と「公明党衆議院東京第12選挙区総支部」の収支報告書には、政治資金パーティの収支が一切記載されていない。

この時のパーティに会費を支出したという記載が他の国会議員の収支報告書から確認できる。太田昭宏元公明党代表の政治団体「ビジョン21」は3万円、河野太郎現デジタル大臣が代表を務める「河野太郎事務所」は2万円などだ。参加した側が「励ます会」に支払ったと記載しているのが嘘ならば、太田元代表や河野大臣が収支報告書に嘘の記載をしたことになる。

岡本議員自身も政治資金パーティを開催したことを証明する投稿を、次のようにフェイスブックにしている。

「議員となって5年半。日頃より支えて頂いている皆様への感謝の想いを伝えたいと、自身初めての、ささやかなパーティを開催いたしました。会場のキャパに制限がある為に、お声がけできなかった皆様に、心よりお詫び申し上げます」

山口那津男公明党代表、石井啓一幹事長、太田元代表、河野大臣らがパーティで演説し、壇上の後ろに岡本議員が写っている写真を、パーティから2日後の6月13日に投稿している。

2019年11月15日にも、岡本議員は「励ます会」を開催しており、複数の国会議員の収支報告書にパーティ券代の記載が確認できる。19年の政治資金パーティは、安倍晋三元総理大臣があの「桜を見る会前夜祭」をしたホテルニューオータニの「鳳凰の間」で開催されており、収容人数が500人ということから、相当の収入があったはずである。この時の様子も、河野大臣のツイッター(現「X」)から確認できる。

岡本議員は政治資金パーティを開催したことをFB上で公表していた。

◆「任意団体が開催したもの」と強弁

岡本議員は21年の衆議院選挙で、比例北関東ブロックから、政界を引退した太田元代表の地盤を受け継ぎ東京12区に鞍替えした。2018年と19年の政治資金パーティは、鞍替えを念頭に置いた資金集めだったのではないかと告発状では指摘している。

この問題を最初に報道した週刊文春の取材に対して岡本議員事務所は、「この政治資金パーティは任意団体が開催したもの」として、収支報告書に記載する必要はないという見解を示している。

この理屈が通じるならば、政治資金パーティを収支報告書に記載する政治家はいなくなるだろう。それとともに政治資金の透明化を目指す政治資金規正法は骨抜きになる。

◆「悪質な闇政治資金パーティだ」と専門家

自民党の薗浦健太郎元議員は政治資金パーティの収支を一切記載していなかったが、「しんぶん赤旗日曜版」が不記載について質問状を送ったところ、慌ててその収支が計208万円余りだったと収支報告書を訂正した。

その後、刑事告発されて東京地検が捜査した結果、約4900万円の虚偽記載・不記載をしていたことが判明し、議員辞職に追い込まれた。今回の事件も一切記載していないという点では薗浦元議員の事件と同じともいえるのではないか。

この事件を刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授は次のように指摘する。

「これまで政治資金問題では自民党議員の事件が注目されてきましたが、公明党議員でも悪質な闇政治資金パーティが開催されていたことが22年12月の週刊文春のスクープ報道で発覚しました。私が告発していた薗浦元議員らについて東京地検から略式命令を請求しましたと電話があった後に、岡本議員らを規正法違反で告発するために東京地検に告発状を郵送しました。特捜部が薗浦元議員と同じように捜査を尽くして立件すれば、岡本議員の闇パーティの規模も明らかになるでしょう」

公明党が消費税において軽減税率を提案した結果、10月からインボイス制度が導入された。政治資金にも「適格請求」がなされるような制度の導入を自民党に直ちに提案すべきではないだろうか。

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

 

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