◆石綿調査の報告書を閲覧拒否
ところが上板橋駅南口の再開発では、当初いくつもの現場で「石綿なし」と掲示されていたほか、吹き付け材らしきものや煙突があるのに石綿の有無を調べたかどうか自体の記載がないなど、調査ミスが疑われる内容が少なくなかった。 5月以降、後藤さんや住民は再開発組合や板橋区に現場掲示における事前調査や作業方法などの不備を指摘してきた。その後、区の指導で不適正な作業方法の記載が修正されたり、石綿を含む建材が多数追加されるといったことが繰り返されてきた。 元請けの大成建設は「石綿なし」とされていた掲示が変更されたことは「住宅の明け渡しが遅れて石綿の事前調査できていない箇所があったためで見落としではない」などと調査ミスではないことを強調する。吹き付け材らしきものは分析済みで石綿不検出、煙突には断熱材が使われていなかったと再開発組合から回答があったという。 いずれにせよ断片的な情報しかない現場の掲示だけでは詳細がわからないことから、後藤さんらは調査の詳細が記載された報告書の閲覧を求めてきた。ところが再開発組合は5月31日以降、拒否し続けている。 もともと再開発区画に隣接した戸建て住宅の解体が5月に問題になったことが住民らが活動を始めたきっかけだ。後藤さんによれば、屋根や壁に石綿を含む成形板が使用されていたにもかかわらず、バール(かなてこ)で破砕したり、投げ落としたりする違法作業だった。住民から相談を受けた後藤さんが通報し、池袋労働基準監督署と板橋区が指導したという。 住民によれば、この場所は再開発の区域外ではあるが、移転先として用意された代替地で、実際に紹介された土地所有者もいるとのこと。その真偽は不明だが、再開発の前段ともいうべき解体工事が不適正だったと受け止められ、住民の不安が増す結果になった。 発注者の住友不動産は「板橋区から口頭指導を受けたとの報告がありましたが、法令違反の事実は認められませんでした」(広報部)などと主張する。 だが、5月18日には筆者も現場を訪問し、除去作業の完了後にもかかわらず、石綿を含む成形板の破片が散乱している不適正な状況を確認している。また区環境政策課の担当者が再発防止や再清掃を指導するのを目撃した。