◆不適正除去疑いの事案も
だが実際に不適正作業を示唆する“証拠”もあるという。 後藤さんは区の指導でバール解体から「手ばらし」に修正された現場の1つを7月11日に訪れたときに撮影した2枚の写真を示す。 1つは現場の掲示を撮ったもので、外壁と台所の「フレキシブルボード(セメントと繊維を混ぜて高圧で成形した不燃材)」が石綿含有とされ、フレキシブルボードは「作業場を養生シートで養生し、湿潤化しながら手ばらしで除去」と変更されていたことがわかる。 もう1枚は、同じく備え付けられていた労災防止の「KY(危険予知)」活動の用紙を撮影したもの。その日の作業として、「キッチンパネル撤去」と手書きで記載されていた。台所にある石綿含有のフレキシブルボードのことだ。 どのような危険があるかを書く欄には「電動工具によるケガ」、防じんマスクやシールドの使用が必要と記入されていた。また「電動工具の点検」との項目にも点検済みを示すチェックが入れられている。「有資格者名」の欄には5名分の名前とともに「アスベスト作業」とわざわざ断り書きされていた。 つまり、区の指導で石綿含有のフレキシブルボード撤去は、破砕しないよう手ばらしで撤去すると変更されたはずだったのが、当日の作業を説明する書面では電動工具による切断作業になっていたのである。 ちょうど通りがかった作業員に後藤さんがキッチンパネル撤去の方法を聞くと、「バールです」と答えたという。 「区の指導で手ばらしになったはずですが、現場監督が書いたであろうKY活動の用紙では電動工具による除去とされ、作業員はバール解体といっていて、情報の伝達が適切にできていない可能性がある。これでは本当に適正な方法で除去されたのかわかりません」と後藤さんは危惧する。 大成建設は「事実関係の確認を行ないましたが、適切に作業しており法令違反の事実は確認できませんでした」などと否定した。しかし同社で確認できなかったというだけにすぎない。前出・住友不動産の事例では実際に法令違反を筆者が現場で確認していても否定していることからも実態がどうだったのか疑わしいといわざるを得ない。