◆大半が税金なのに閲覧拒否
また同省は2017年に「建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策に係るリスクコミュニケーションガイドライン」(2022年3月改訂)を公表し、工事発注者に対し積極的に住民に情報を開示するよう推奨している。 これに関連して報告書の閲覧について、「個人情報に配慮しながら見せることは法の趣旨には反してませんし、ガイドラインでは1つの情報提供方法として謳っています」と同省は積極的な開示を後押しする。 事実、筆者は2020年に板橋区内の大山再開発における石綿問題について記事を書いたが、その際は再開発組合が個人情報を付せんで隠して、石綿調査の報告書を閲覧させている。都内のほかの再開発現場やそれ以外の改修・解体現場でもしばしば報告書を閲覧しており、拒否されたことはまずない。現場に掲示している石綿調査の内容がより詳細に記載されているにすぎず、隠すようなものではないからだ。むしろ開示することで誤解が解けることも少なくない。真面目な事業者だと地元説明会で報告書をそのまま配布する場合すらある。説明会で配られる程度の報告書すら必死に隠すのは、あるいはよほどずさんな調査なのかと勘ぐりたくなる。 そもそも再開発は民間事業ではあるが、国や板橋区の補助金が大量投入されている。この再開発を所管する区地区整備課は石綿除去に補助金が投入されていることは認める(石綿調査は組合が負担)が、解体関連の補助額は「公表していない」という。区によれば、再開発の事業計画約415億円のうち、道路整備など区の負担約190億円に加えて補助が約80億円で、じつに65%の約270億円が税金である。 それだけ公共性が高い事業にもかかわらず、国が積極的に開示するよう求めている石綿調査結果報告書の閲覧すら拒否するというのはさすがに身勝手がすぎよう。 前出の環境省ガイドラインでは、新たに石綿を含む建材が見つかった場合には「追加的なリスクコミュニケーションが必須」とされる。当初と異なる掲示がされている以上、きちんと裏付けも示して理解を得ていくことが必要だ。 改めて再開発組合に取材を申し込んだが、「すべてお断りしております」と拒否した。