◆午後7時以降は、国境に近づく者は銃で撃つと警告
会寧市に住む取材協力者は、豆満江側の国境警備状況も同様だとして、次のように状況を説明する。
「警備隊の兵士の配置地域と、勤務する位置を固定せず頻繁に交代させている。昔のように約束して密輸するなんて考えられない。やるなら、警備隊の関与なしの命がけになる。
以前は豆満江に出て魚を釣り洗濯もしたけれど、ほとんどできなくなった。場所によっては、(川辺に出る)時間を決めて事前申告すると出られる。国境の川に繋がる道には、あちこちに警戒所が作られていて警備隊や(民間武力の)「労農赤衛隊」が通行する人をチェックする。午後7時以降は、国境に近づく者は銃で撃つと警告されている。
(国境近くの)無人地域に向かう道路は、緩衝地帯でもないのに警備隊が2~3人で任意に遮断して通行禁止にする。車も人もすべて止めるので、夜になると近くに住んでいる人たちは地区から出られなくなった」
◆兵士に対し金正恩氏への忠誠、思想教育を強化
現役の国境警備隊員A氏は、最近、部隊内での思想・政治学習が格段に増えたとして、次のように説明した。
「ロシアとウクライナが戦争をしていることについて、毎日の政治学習で思想と信念を強調している。『戦争は力の対決である前に思想と信念の対決だ』という金正恩のお言葉を繰り返している。
米国には、いつか力で勝利しなければならない。それが金正恩元帥様と党に対する忠誠心を持つ軍人たちの使命であり任務だと強調している。学習時間も長くなった。以前は単純に講義する方式だったが、最近は問答式、発表式に大きく変わった」
金正恩政権による脱北、越境阻止策は、単純に国境線を厳重にしただけではない。国境に続く道にはいくつもの検問所があり、住民の動向を徹底把握し、国境警備隊と住民が親しくならないよう引き離すことにも力を入れている。2020年1月にコロナパンデミックが発生して以降に採られた、狡猾、巧妙な警備と管理策によって、中国への越境はほぼ不可能になった。(連載了)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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