◆市は「把握せず」と回答
市西蒲区役所健康福祉課は「検査方法はこちらの指定ではなく、空気に石綿が含まれているか1日でも早く結果を出して欲しいとお願いしました」と説明。 石綿濃度を実際の10~100分の1に偽装するためマニュアルから除外され、国が使わないよう求めていることを指摘すると、市は「把握してなかった」(西蒲区役所健康福祉課)として、「決して隠ぺいするつもりはない」(同)と釈明した。
市によれば、最初に「位相差顕微鏡法」で石綿を含むすべての繊維を調べ、空気1リットルあたり0.1~1.7本の総繊維数濃度だった。マニュアルでは総繊維で同1本超の場合に走査電子顕微鏡(SEM)で石綿の有無や濃度を調べることになっているのだが、その際に市が「1日でも早く結果を出して欲しい」と要求し、分析機関が位相差分散顕微鏡法を選定したのだという。
位相差顕微鏡法による分析結果報告書には、「アスベストモニタリングマニュアル4.2」に基づくことが記載されているが、位相差分散顕微鏡法の石綿濃度にはマニュアルについての言及がないと市は認める。 市から測定を請け負った分析機関に連絡すると、位相差分散顕微鏡法の使用を提案したことを「それは事実です」と認めた。
この分析法がマニュアルから除外されていることも認識していた。だが、その理由の「微細なアスベストを精度良く計測しにくい」ことは「それは見方によって違うんで、なんとも私どもはお答えできません。私の見解はそうとは限らない」(請負分析機関)という。
環境省のマニュアルで除外されたことやその理由をあらかじめ説明したのか聞くと、「なんとも答えられない。すいませんけど、検査機関としてお伝えできることはこれ以上ない」(同)などと答えなかった。分析機関が必要な情報を伝えていなかった可能性がある。
少なくとも分析機関は市に対して、マニュアルから除外され、環境省が使わないよう求めている分析法であることを説明する責任があるのではないか。また発注した市もどのような分析法なのかきちんと確認する義務があったはずだ。
まして石綿濃度を10~100分の1に偽装する分析法による測定結果では安全確認ができていないといわざるを得ないが、市は「その後の対応を1日でも早くしなくてはならない状況だった」「調査会社にお任せじゃないですけど、きちっとした方法で検査結果をだしていただいていると認識している」などと強弁した。
その対応が適切だったのか尋ねると「適切だったかは、すいません」と明言を避けつつ、「1つ安全対策をとったということではないかと思っています」と主張した。 総繊維数濃度で最大1.7本/リットルだった以上、市が採用した分析法で0.1本未満だったとしても、現場に1.7本/リットルの石綿が飛散していた可能性がある。つまり安全対策になっていないのは明らかだ
しかも誰もいない静穏時の測定であり、園児らが出入りすればもっと高い濃度になってもおかしくない。市による11月2日の“安全宣言”は実際には石綿飛散を見逃したままだった可能性があるといわざるを得ない。