◆市が法令違反の可能性も

石綿則施行により、通常吹き付け石綿がある場合、除去あるいは、天井板を入れる囲い込みで石綿の落下を防止する措置などが講じられるようになった。 ところが新潟市の七浦保育園では、吹き付け石綿が見落とされた結果、そうした適切な管理がされず、天井に吹き付け石綿があるのに園児らがその下に居続けることになった。その間石綿飛散がないかの調査もされていない。当然そこに居る園児らに石綿ばく露リスクがあったことになる。

これまでにも蛍光灯の交換といったメンテナンスに加えて、場合によっては改修工事で天井の吹き付け石綿を一部除去して飛散させるようなことがあったかもしれない。

吹き付け石綿のある部屋で働いていただけで中皮腫(肺や心臓などの膜にできる非常に予後の悪いがん)を発症し、労災認定を受けた事例がすでに100件超に上る。吹き付け石綿の下に「居るだけ」でもそれほど危険なのだ。まして年齢が若いほど、石綿ばく露による健康リスクは上昇することが判明している。

まず10月の蛍光灯交換作業時における吹き付け石綿の落下とその後の対策が不適切だったことによる園児らのばく露だけでなく、労働者のばく露をきちんと調べて当事者に知らせる必要がある。さらに過去のメンテナンスや修繕、改修をはじめ、天井を触る可能性がある作業や行為を徹底調査し、石綿ばく露リスクを推計したうえで、過去に在籍した園児や保護者にも知らせる必要があろう。

もう1つは、市が上記に紹介した石綿則第10条の管理義務に違反してきた可能性があることだ。市は吹き付け材に基準を超える石綿が含まれる可能性を知りながら、2006年以降、分析調査すらせず放置してきた。法で定められた管理義務を適切に履行したとは言い難い状況だ。

また吹き付け石綿を触る可能性のある作業の場合、現場の隔離や負圧除じんなどが求められるが、市はそうした対策を講じるよう発注しておらず、請負業者に法違反をさせたことになる。石綿則では、適切な費用や工期で発注するよう「配慮」するよう求めている(第9条)が、それも履行できていない。関連して発注者が発注の際に石綿の使用状況を通知することが努力義務ながら課されている(第8条)が、これにも実質的に違反したといえよう。

こうした複数の法令違反の可能性がある状況だが、市は所轄の労働基準監督署に相談もしていなかった。指摘すると、市は「相談させていただきます」(西蒲区役所健康福祉課)と回答した。きちんと検証し、再発防止を講じる必要がある。

さらに重大なのは10月の事故時や過去に在籍した園児らの石綿ばく露リスクの検討などの対応がされるのかだが、現状ではまったくわからない状況だ。ほかの自治体では第三者の有識者による徹底調査や検証、リスク評価が必要と判断される事案だが、新潟市はどうするのだろうか。 現状で保護者の納得が得られる対応とはとても思えない。また園児が成人してこの件を知った際にどう思うだろうか。新潟県内ではかつて佐渡市がそうした対応をしている。同市よりはるかに規模の大きい政令指定都市の新潟市ではずさんな対応のまま放置するとすれば情けない限りである。第三者による徹底した調査と検証などが市には求められているのではないか。

 

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