パー券不正疑惑でいったん不起訴になったものの、検察審査会に不服申し立てされた平井卓也議員。選挙区は香川一区だ。公式HPより。

パーティ券問題は自民党の派閥だけではない。自民党の広報部長を務める平井卓也元デジタル大臣が、政治資金パーティ券10枚20万円分を企業に購入するように依頼しながら、実際の出席者を3人に絞るよう依頼し、その上パーティ自体を開催しなかった問題で刑事告発されていたが、高松地検は今年10月に不起訴とした。刑事告発していた上脇博之神戸学院大学教授は、この決定を不服として検察審査会に審査を申し立てた。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆10人分買って出席者は3人だけにしてと案内状に

申立書によると、平井元大臣が代表を務める「自由民主党香川県第1選挙区支部」(以下、政党支部)は、2020年3月9日に政治資金パーティ「平井卓也を励ます会」(以下、「励ます会」)を開催する予定だった。

その案内状には「チケットご購入の件」というタイトルともに、一枚2万円のチケットを10枚購入するよう記載されていた。しかし、案内状の下段にはなんと、「同封の『FAX返信用紙』で出席者(3名分)を実行委員会にご連絡いただけますようお願いします」とも記載されていた。「20万円分購入してほしいが出席は3人だけにしてほしい」という意味だと解釈されるのは当然である。

これが問題のパー券購入依頼書。政党支部が送ったものだ。10人分を購入依頼して参加は3人に絞ることを求めている。情報提供者の保護のため数字部分は黒塗りにしている。

◆パーティ2度延期も知らせず参加すら不能に

しかもだ。3月9日に開催予定だった「励ます会」は2度延期されたのだが、20万円分のパー券を購入した企業には、延期の案内すらなされなかったのである。つまりその企業からは誰もパーティに参加できなかったわけだ。

パーティに出席しないことを主催者が事前に認識していた場合、欠席者の支払い分はパーティ収入ではなく「寄付」として処理しなければならない。ところが平井議員の政党支部の政治資金収支報告書(以下、収支報告書)には、それに該当する記載は見当たらず、そのまま「政治資金パーティ収入」として計上されていたのだ。

平井卓也を励ます会の案内状。

◆捜査で真相解明を

これらのデタラメぶりが政治資金規正法違反だとして、平井元大臣らは22年11月に高松地検に告発されたが、結局不起訴になった。これを不服として、刑事告発をした上脇教授が検察審査会に審査申立てを行った。その理由を次のように語る。

「パーティの案内状に20万円を明記して地元の企業に10人分のパーティ券を購入させておきながら、3名しか参加させないようにしていること自体も問題ですが、パーティの2度の延期を連絡せず、購入した企業に誰一人パーティに参加させなかったのは、寄附の強制です。極めて悪質ですから当然起訴されるものと期待しましたが、不起訴にされてしまったので、高松検察審査会に審査申立てをしました」

上脇教授は自民党の主要5派閥のパーティ券不記載問題に関連して、関係者を刑事告発し、それがきっかけになって検察の捜査が始まった。平井大臣のパーティ券不正問題についても、あらためて捜査がなされることを期待した。

「自民党の主要5派閥の政治資金パーティ収入のうち、20万円を超える収入の明細の不記載を刑事告発したところ、東京地検特捜部の捜査の結果、裏金作りがなされていたことが判明し、自民党の金権体質が明らかになっています。高松検察審査会が平井元大臣らの悪質な寄附強制について一般市民の良識で“起訴相当”と議決することを期待しています」

パーティ券不正による裏金作りは、自民党の派閥だけでなく、自民党議員個人の政治資金パーティでも行われているという疑念がぬぐい切れない。検察審査会がどのように判断するのか注目したい。

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

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