<北朝鮮内部調査>水産業は今どうなっているか(1)コロナと資源減で打撃 金政権の統制強化で没落した漁民も
◆日本の感覚では激安だが…
北朝鮮における水産業の現状をリポートする連載3回目は、末端消費者に販売されている魚種と価格について整理・報告していく。市場や国営商店では、日本や韓国でもなじみ深い海産物が小売りされていた。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆調査の概要
アジアプレスが11月末から12月初旬にかけて実施した水産業の現況調査の概要は次の通りだ。調査は、咸鏡北道(ハムギョンプクド)、両江道(リャンガンド)に住む取材協力者が、(1)日本海側の漁港の状況、(2)水産物の輸送と流通、(3)各種海産物の販売価格─の3点について行った。国内の移動統制が厳しく、取材協力者たちは直接漁港のある現地に赴くことができず、漁業と水産物流通に携わる業者に国内電話で話を聞くとともに、協力者の居住地の水産物商人と会った。情報が得られたのは咸鏡北道の清津(チョンジン)と金策(キムチェク)、明川(ミョンチョン)郡、咸鏡南道の咸興(ハムン)。西海岸の黄海については十分な調査ができなかった。
◆国営商店の復活図る金正恩政権
咸鏡北道のA市と両江道の恵山(ヘサン)市の国営商店と公設市場で価格調査を行った。
この数年、金正恩政権は物資流通の国家統制を強めており、漁業事業者は国が運営する流通網を通じて国営商店に海産物を納入するよう指示されている。市場の商人は国営商店から卸売りしてもらって販売することが原則になっている。
傷んでいたり消費期限を過ぎていたりするもの以外は、概ね国営商店が定めた卸値で購入するしかない。かつてのように市場の商人が自分の裁量で自由に仕入れ・販売することは困難になっており、利が薄くなって商売をやめる人が増えているという。一方の国営商店では、魚介類は常時販売されているわけではなく、大量に入って来る時もあれば、品切れが続くこともあるそうだ。