厳寒期に入った北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)で、12月に入って機関と企業が、所属する労働者に石炭配給を実施したことが分かった。供給量が少なくて凍える冬を過ごした昨年よりも量が多く、住民たちはほっとしているという。一方で、配給だけでは越冬できないため石炭泥棒が横行している。会寧(フェリョン)市に住む取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン)
◆石炭200~250キロで暖房できるのは1カ月だけ
「12月に入って、各機関と企業所で煮炊きと暖房用に石炭配給を行った。量は単位(組織)ごとに差がある。安全局(警察)や保衛局部(秘密警察)など力のある所は1一人当たり1トン以上で出たが、一般企業は概ね25キロの麻袋で6~8袋ずつ程度だ。例えば、会寧靴工場では200キロ、タバコ工場は250キロずつ出たそうだ。」
寒冷地の咸鏡北道出身の脱北者によると、石炭だけで煮炊き、暖房をする場合、1世帯でひと冬に1.5から2トンが必要だとのことだ。昨年は寒冬だったのに150キロ程度しか出ず、厳寒期を他の家庭と一1部屋で同居して凌ぐなど、多くの人が越冬に苦労した。
一昨年は労働者一1人当たり500~800キロが配給されていたことを考えると、今年の配給量も必要量の15%程度にしかならない。200~250キロでは一1世帯が一1か月持つかどうかだというが、歓迎する雰囲気だという。
◆炭鉱に取りに行っても金がなく石炭運べない企業
石炭配給は、国がその費用を保証する「石炭伝票」を各機関、企業に発給し、それを炭坑や石炭会社に持って行って現物を受け取る方法で実施された。石炭会社はこの伝票を銀行や国家機関に提出し、後に精算する方式だ。
大きな問題になっているのは炭鉱で受け取った石炭の運送だ。協力者は次のよう述べる。
「石炭伝票では、企業は労働者1人当たり700キロ程度が渡されることになっている。しかし企業には炭鉱から石炭を運んでくる金がない。それで石炭を売って車両を借りて来くる費用と燃油代を工面するしかない。結局、それらを差し引いて労働者に渡されるのは200~250キロなのだ」
企業所は金のある商売人に1トン当たり90中国元ほどで石炭を卸売りし、商売人はそれを250キロに小分けして、3万2000朝鮮ウォン(約26元)で小売りしているという。計算すると、12月中旬の会寧市の市場では、石炭1トンの価格は約106元になる。市場には石炭が大量に出まわっているそうだ。
※1中国元は約20.2円
「寒くなったので、食糧よりも石炭を優先して買おうとする人が多い。節約ために、石炭コンロで水を温めてペットボトルに入れ、布団に入れて寝る家もある。石炭を狙って夜に倉庫を荒らしたり、人の家の薪や石炭を盗んだりする事件が多く、12月7日には、人民班に対し警備を強化せよと指示があった」
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。