◆人民班と職場に無条件参加を指示
12月19日、北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市で公開裁判が開かれ銃殺刑が執行された。恵山市では今年に入って3度目である。銃殺されたのは強盗殺人を犯した若い男性だった。公開裁判には労働者や地域住民が多数動員されたが、当日の詳しい状況について、恵山市の取材協力者に話を聞いた。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆13人の公開裁判 「人間があんなに震えるのは初めて見た」
――公開裁判には多くの人が動員されたそうですが、当日の様子教えてください。
午前中に、各職場の労働者に公開裁判に参加するよう指示がありました。特に青年同盟員は無条件に参加するようにと。昼食後に、職場から隊列を組んで恵山飛行場に移動しました。また、洞事務所を通じてすべての人民班に対して無条件に参加せよと指示がありました。
※洞事務所は町役場に該当。人民班は末端の行政機関。地区ごとに20~30世帯程で構成される。
――何人を公開裁判にかけましたか?
全部で13人です。裁判に引き出された人は皆、頭を丸刈りにされていました。裁判の間中ずっと震えている人がいましたね。人間があんなに震えるのは初めて見た。裁判は最前列に各機関と企業の青年同盟員を立たせて進行しました。始まる前に安全局(警察)の機動隊が銃を携えて出て来て、射撃手も配置されていたので、全員を撃つかと思った。
◆処刑されたのは23歳 栄養失調で除隊の元軍人
――銃殺されたのは1人ですね。
銃殺されたのは23歳の男性で、農村から市内に穀物を運ぶ「食糧デコ」(運び屋)の女性を襲って奪おうとしたが、声をあげて反抗されたので石で打ったそうです。女性はその場で即死したそうです。9月から予審(取り調べ)を始めたというから(判決が)速い。殺人事件なので素早く法的処理をしたということでした。
犯人は軍に入隊したけれど栄養失調になって(実家に)帰されていた男で、両親は離婚して父親と一緒に住んでいたそうです。鉱山労働者だったが、無断欠勤が多く泥棒や強盗を繰り返していたということでした。
――強盗殺人の罪で銃殺したと。
最近、強盗事件が頻繁に発生しているので、夜に移動するのが怖いくらいだ。裁判では安全局の幹部が、強盗行為や反社会主義行為は容赦しない、厳重な法的処罰を下すと強調しました。見せしめに死刑したんです。