◆市議会答弁に反した対応
ところが市は(1)の有資格者による目視検査を実施せず、(2)の空気環境測定であえて測定結果が出る前に利用再開した。少なくとも2023年7月の発表以降、市は吹き付け石綿の落下事故で安全確認ができていないにもかかわらず現場を開放すれば、石綿則違反になり得ることを承知していた以上、安全軽視の対応といわざるを得ず、石綿則第10条に違反している可能性がある。
西野田労働基準監督署は「個別具体的なことはお答えできない」と回答。だが一般論として石綿飛散のおそれが続いているかどうかは「調べないとわからない」として測定の必要性を認める。
実際に測定し、「(石綿が)飛散していれば問題にはなってくる」(同監督署)と法違反との判断もあり得るとの見解だ。また利用再開後の継続測定についても、「労働者保護の観点から望ましい」(同)との認識を示す。
そもそも市は2023年10月4日の市議会決算特別委員会で問われ、今回のような落下事故の際に清掃後、「早急に空気環境濃度測定を行い、安全性を確認して施設使用の判断をしてまいります」と答弁している。つまり、市議会への説明も反故にした安全軽視の対応だったことは間違いない。
市は「(立入禁止と)囲っていればよいとの理解だった」と釈明するが、立入禁止表示に対する異常なまでの信頼感は理解しかねる。あるいはブルーシートの周りに形だけの“立入禁止”を掲示すれば、石綿飛散を防いでくれる“超自然的な作用”が働いているとでもいうのだろうか。市議会でも答弁している以上、さすがに言い訳が過ぎよう。
改めて市に有資格者による石綿の取り残し検査や実際の利用環境における継続測定の実施を尋ねたところ、「いまのところ考えてなかった。内部で検討します」との回答だった。再発防止については「今後検討のうえで改善したい」と述べた。
大阪市は不正を素直に認めて利用者らに謝罪し、科学的な安全対策を積み上げるべきだ。市議会での自らの答弁にすら反する対応では話にならない。
市は24日午後6時に「空気中に健康リスクに影響を与えるアスベストは浮遊していない」との測定結果を発表。同日に閉鎖解除するという。筆者の取材に対し、有資格者による目視検査などを「検討します」としたが、その場しのぎの回答だったということか。