政治団体「宏池政策会」(以下、岸田派)が1月18日に政治資金収支報告書(以下、収支報告書)を修正したことを受け、「今になっての修正は裏金を作っていたことの自白」だとして、事実上の代表といえる岸田文雄内閣総理大臣と根本匠事務総長ら4人が再度、政治資金規正法の虚偽記載罪で東京地検に19日、刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆告発と捜査がなければ2501万円を隠していたのでは
岸田派は18日に総務省に収支報告書の訂正を出した。それによると、2020年の政治資金パーティの収入額を、従来2億5532万7470万円としていたものを869万円増やし2億6328万円と訂正した。
また、19年からの繰越額は9362万9052円だとしていたが、1605万円増やし1億1863万9052円と訂正した。これによって、20年の繰越額は4274万5992円だったものが、5879万5992円に2501万円も増えた。それに伴って21年、22年の繰越額も2501万円増額して訂正された。
告発状では、この2501万円が裏金として22年末まで1円も使われずプールされていたと指摘している。今回の修正は問題だ。これまでの一連の自民党5派閥の不記載事件を刑事告発、また東京地検特捜部の捜査があった後の修正なのである。つまり、裏金を作っていたことを岸田派が「自白」ようなものなのだ。刑事告発や捜査が行われなかったら、これらの金は今も裏金のままだったに違いない。
◆裏金事件告発続けると上脇教授
この岸田派の新たな裏金疑惑を告発したのは、一連の自民党5派閥の20万円超不記載事件を刑事告発し続けている上脇博之神戸学院大学教授だ。上脇教授は次のように指摘した。
「茂木派の平成研究会は不記載と虚偽記入によって計280万円の裏金を作っていたことが、訂正された収支報告書で確認できたので先日刑事告発しました。岸田派はその9倍近い2501万円の裏金を2020年までに作り、22年末までプールし続けていたのが確認できたので刑事告発しました。
世間では、特捜部が一部の者らを在宅起訴あるいは略式起訴したことで派閥の裏金事件は終わったと思っているかもしれませんが、私の裏金事件告発はまだ道半ばです」
◆派閥解散よりザル法の改正を
岸田総理は、19日に岸田派の解散を発表した。今回の一連の不記載事件で、事件は派閥の政治資金パーティを舞台にして起きた。しかし、その収入の不記載事件は、岸田派に所属する平井卓也元IT担当大臣が主催するパーティでも起き、上脇教授によって刑事告発されている。
岸田派を解散したからといって、このような事件が起きなくなるわけではなく、舞台は派閥の政治資金パーティから個人主催のパーティに移って起きる可能性は否定でない。
収入源の多くが事実上の寄付となっている政治資金パーティの廃止をはじめ、連座制の適用、政策活動費の廃止、企業献金の廃止など、ザル法と言われる政治資金規正法を改正しない限り再発防止はあり得ないだろう。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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