政治団体「平成研究会」(以下、茂木派)が1月17日、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)を訂正した。この訂正は、当初作成され提出された政治資金規正法(以下、規正法)が不記載・虚偽記入であったことの「自白」に当たり、280万円の裏金が作られていたとして、茂木敏光会長、新藤義孝事務総長ら4人が18日、刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆検察捜査後の報告書修正は「犯罪の自白」だ
17日に総務省が公表した茂木派の収支報告書では、2020年から22年の3年間に一度ずつ開催された「平成研究会セミナー」で、21年に20年分の2万円、22年に21年分の183万円のパーティ券販売収入があり、さらに22年分について95万円を加算すると修正した。
刑事告発したのは上脇博之神戸学院大学教授。告発状では、茂木派は一連のパーティ券販売収入の不記載に関する23年末の刑事告発を受け、東京地検による捜査を受けた後になって新たに修正したのは、茂木派による犯罪の「自白」だと指摘している。
また上脇教授は、茂木派だけでなく、これまで刑事告発してきた自民党の5派閥が、企業によるパーティ券購入の収入について訂正が一切ないことを以前から「あまりにも不自然だ」と批判してきた。茂木派は今回も企業分についての訂正は一切なかった。
◆事務方が勝手にできるはずない、 茂木氏らの判断あったはず
茂木幹事長らを刑事告発した上脇教授は次のように指摘する。
「茂木派は、私が昨年末に政治資金パーティの20万円超の明細不記載を追加告発したので、それを17日に『自白』するかのように訂正したのですが、その際に、20年開催のパーティ収入2万円を21年に受け取り、21年開催のパーティ収入183万円を22年に受け取ったとも訂正しました。さらに22年開催のパーティ収入を95万円加算する訂正もしました。
しかし、支出総額の訂正はされておらず、以上の金額が翌年に繰り越されていたのです。
要するに、合計280万円を裏金としてプールしていたというわけです。そんな判断は、事務方が勝手にできるはずがありません。茂木会長や新藤事務総長の判断があったはずです。東京地検特捜部は捜査を尽くして政治資金規正法違反として立件してほしいと思い告発しました」
◆裏金は民主主義を歪める
茂木派を追撃した告発状の最後の部分には、政治資金規正法の第一条が記載されていた。一部を紹介しよう。
「この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ(中略)政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」
そして告発状は、次のように締めくくられている。
「裏金づくりは、『国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする』ことを回避し、『政治活動の公明と公正』を侵害し、『民主政治の健全な発達』を妨げるものであり、極めて悪質であることは言うまでもないことだろう」
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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