川べりに有刺鉄線が幾重にも張られている。その背後の畑はおそらく緩衝地帯だろう。2020年以降、農作業をする住民も立ち入りの際に許可を得なくてはならなくなった。後の建物はアパートのようだ。2023年9月下旬に平安北道の朔州郡を中国側から撮影。(アジアプレス)

◆「中国に逃げたかもしれない」 わずか3日の行方不明で公開捜査

豆満江側でも騒ぎが発生し、国境警備が強化されていた。咸鏡北道(ハムギョンプクド)の会寧(フェリョン)市に住む取材協力者が、騒ぎのあらましを次のように伝えてきた。

「1月12日に游仙(ユソン)地区で、40歳くらいの女性が、川辺に地雷が埋設されているのに構わず豆満江にまっしぐらに向かっていく事件がありました。国境警備隊が威嚇射撃して捕え、安全局に引き渡したところ、女性には精神的に問題があってすぐに解放されたそうです。問題になったのは、多くの人が、この女性が国境を越えようとしているのを見ながら、誰一人通報しなかったことです」

協力者によれば、翌1月13日の人民班会議に安全員が来て講演し、国境地域で中国への不法越境や密輸が発生しないよう、政治事業を強化しろと指示があったという。内容は次のようなものだった

 

「一般住民の中には、国の情勢に無関心で自分だけ楽に生きることしか考えない者がいる。国境地域で起きる犯罪を見て見ぬふりをしたり、隠したりすることも不法行為であり、非社会主義的行為だ。すべての住民は国境を守る目と耳となって些細な現象も申告せよと、講演しました」

会寧市では1月後半にも脱北が疑われる騒ぎがあった。市内に暮らす男性2人の行方が把握できなくなったのだ。ひとりは30代半ばの除隊軍人で、もう1人は50代前半の炭鉱労働者だという。ふたりとも丸1日出勤しておらず家にも不在だったためで、早くも3日目に安全局で捜査に入ることになった。

「警備が厳しくて、今や中国への越境も密輸も想像もできない。よもや越境ではないだろうけれど、(当局は)中国に逃げた可能性を考えて、2人の不明者の名前と身分を広報して捜査を始めました」

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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