◆上がったといっても月額600~850円程度か
取材協力者たちからの情報を総合すると、2023年4~9月の間に労賃は一度引き上げられている。一般国営企業の場合、月額1万2000~1万5000ウォン程度になった。そして、去る11、12月に、さらにその2倍以上に引き上げられたわけだ。
12月の調査で明らかになったひと月の労賃の概要は次のとおりである。企業により、職位により差があるという。調査したのは公務員の他、銅鉱山、鉄鉱山、製紙工場、靴工場などだ。
公務員 3万5000~5万ウォン
教員 3万8000ウォンから5万ウォン
国営企業の一般労働者 3万5000ウォン
「年労保障」(退職者の年金) 2万5000ウォン
※この時点では1000ウォンは約17円。
アジアプレスでは、現時点で咸鏡北道と両江江道以外で調査ができていない。平壌や他都市でも同様の「賃上げ」があった確証はないが、国家統制経済システム下における労賃の改変なので、全国共通の運用がなされている可能性が高いと考えられる。
「当初、労賃引き上げは国営企業から順に11月から始めることになっていたが、現金が準備できず、12月から実施した所が多い」と、両江道の協力者は言う。
付言すると、数は多くないが、国営企業内で別途に資金作りのために運営する部署では、労賃を12万~15万ウォンにまで引き上げたという。これは企業内で作ったビールやパン、菓子などの消費品を販売して出た利益を分け合う方法で、一般的な労賃とは体系が異なるが、利益が出れば出るほど取り分が増える職場で人気が高いという。
金正恩政権は、なぜ一気に労賃を20倍以上も引き上げたのか。冒頭に述べたように、職場で支給される労賃を糧穀販売所での主食購入費用に紐付けたのであるが、その目的は何なのか? 調べを進めると、人民統制管理が目的であることが分かってきた。次回で詳報する。( 続く2へ >> )
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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