◆厚労省調査でも石綿検出か
最後に(3)だが、検証とまでいえるかは不明だが、厚労省委託で分析した形跡がある。 同省は2020年末にけい藻土バスマットなどから石綿が検出され、大きな問題になったことを受けて製品の買い取り試験を開始しており、その一環として分析させたと筆者は考えている。 実際に2023年8月に情報公開請求したところ、2023年2~3月に「肥料製品」2試料を同省の指示で分析させていた。製造メーカー名や製品名は黒塗りされていて判別できないが、筆者が報じた1~2カ月後というタイミングからもまず間違いなくマインマグだろう。
分析結果も黒塗りされているが、国際標準の分析法で調べた報告書をみると、2試料とも「JISA1481-1」で定性分析した後に、「JISA1481-4」で定量分析をしている。この分析法では、定性分析で石綿が検出された場合にだけ定量分析することになっていることから、いずれの試料からも石綿が検出されていることは間違いない。
またおそらく黒塗り作業の不備だろうが、定性・定量分析結果として「クリソタイル」、つまり白石綿が検出されていることがわかる箇所もあった。定量分析の結果(含有率)は黒塗りされていて判別できなかった。 問題は定量分析の結果である。すでに述べたように黒塗りのためはっきりしないが、少なくとも国際標準の分析法では筆者依頼の分析結果と同様に定量でも基準超の石綿が検出されていてもおかしくない。黒塗りされた内容をみれば、ノザワの主張の一端がつかめる可能性があるが、現在、製品名や分析結果などの開示を求めて審査請求中である。現段階では、マインマグの分析結果だろうことは筆者の推測にすぎず、確定していない。
同社と「同じ結論」かどうかは不明だが、国の分析でも石綿の有無を調べる定性分析では白石綿が検出されている可能性がありそうだ。 ちなみに同省は2023年度にも買い取り検査を実施しており、そこで同社と同じようにTEMによる分析をしている可能性がある。こちらは報告書がまだ提出されていないとして開示対象にならなかった。審査請求の結果とあわせて入手したい。
この間の取材で明らかになったのは、ノザワはマインマグの購入者や利用者に対しては、あいまいな記載の「お知らせ」で石綿含有の有無すら明らかにしていない一方、国に対しては詳細に説明しているとみられることだ。こうした同社の“二枚舌”ぶりは不誠実きわまりない。
そして石綿含有は経産省への説明から、より明確になったといえよう。仮に基準内だったとしても国際標準の定性分析法「JISA1481-1」で石綿含有だった以上、有害性は間違いない。にもかかわらず、発表ではそれがわかりやすく示されていない。
同社発表後、筆者に連絡してきたマインマグを使っていた農業従事者(44歳)は発表を読んでいたが、石綿含有はまったくないので安全だと誤解していた。説明したところ、驚いていた。 しかも同社が発表で詫びたのは「分析結果が得られるまでに時間を要した」ことだけ。同社の製品を購入・利用した結果、石綿ばく露したであろう農業従事者らに対しては一切謝罪していない。 「ノザワの説明は誠意がない」と前出の農業従事者は憤慨していた。
同社は検出されている石綿が無害化され、繊維状だが実際には「石綿の組成ではない」との解釈により、基準超ではないと主張しているようだが、本当に徹底した実証があるのか。国際的に認められた定性・定量分析法で間違いなく石綿と判定されているものに対し、無害化されたものだと主張している以上、同社には検証報告書を公表し、丁寧に説明する義務があるはずだ。現状では裏付けも示さず、都合の良い主張をしている不誠実な会社にしかみえない。