◆杉田議員は質問への回答を拒否
安倍派(清和政策研究会)に所属する杉田水脈衆議院議員(中国比例ブロック選出)が代表を務める政治団体「杉田水脈なでしこの会」(以下、「なでしこの会」)は、1月末に政治資金収支報告書を訂正し、派閥からの「キックバック」が裏金として、2018年以降の5年間だけで1564万円もあったことを自ら明らかにした。しかし不可解な訂正はそれだけではないことが、その後の調査で分かった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆安倍派からのキックバック「日付は不明です」と記載
杉田議員の「なでしこの会」は過去5年分の収支報告書を1月31日に訂正した。今になって安倍派からの寄付が18年に340万円、19年に252万円、20年に318万円、22年に554万円で、合計1564万円もあったとしている。岸田政権発表の「裏金ランキング」の15位である。
ところが、である。なんと寄付を受けた日付は「不明」と記載されていたのだ。「清和政策研究会からの寄付については裏付ける資料がないため、日付は不明です」と、収支報告書の最終ページの宣誓書欄に追記されていた。
安倍派をはじめ一連のパーティ券の不記載事件を刑事告発してきた上脇博之神戸学院大学教授は次のように指摘する。
「政治資金規正法は会計帳簿を作成し、それに基づいて収支報告書に記載をするよう義務づけていますから、清和政策研究会からキックバックの寄附を受けたのであれば、会計帳簿に寄附の受領日を記載しているはずです。それなのに収支報告書に寄附の受領日を『不明』としたのは、厳密に言えば、収支報告書の不記載罪になります。もしも、会計帳簿にもその受領日を記載していなかったのなら、会計帳簿不記載罪になります。いずれせよ、政治資金規正法違反に該当する可能性があります」
◆スナックやキャンプ場で政治活動? 杉田議員は回答拒否
今回の訂正で目に付くのは、支出欄でやたらと「品代」「飲食代」「書籍代」が計上されていることだ。品代は20年以降12件で合計118万9493万円に上るが、その半数以上が三越伊勢丹での購入だった。政治資金を使って三越伊勢丹で贈り物等を購入すること自体が違法ではないとしても、この品物を誰に贈ったのかが問題になる。選挙区内の有権者に送っていれば公職選挙法違反になる。
杉田議員の場合、中国地方の有権者に購入したものを贈っていれば違法となる。しかし収支報告書には、無償で贈与(=寄付)したという記載がないので、もし誰かに送っていたとしても不明である。現在の制度では収支報告書に購入先の記載は義務付けられているが、誰に贈ったかを記載する義務はない。
書籍も約15万円分を購入したとしているが、これを中国地方に住む誰かに贈っているとすれば問題だ。そこで杉田議員に質問状を送った。品代や書籍代として購入したものを誰かに贈ったか、そうであれば、誰にどういう目的で贈ったのか? しかし杉田議員から回答はなかった。事務所にあらためて電話したところ「回答をする意思がない」と拒否した。
◆杉田議員は説明責任を果たす気がない
これらの問題について上脇教授は次のように指摘する。
「公選法違反の寄付を行なったのではないかとの疑念が生じます。もしその疑念を払しょくしたいのなら、説明責任を果たすべきですが、回答を拒否したということは説明責任を果たす気がないのでしょう。
さらに、訂正により書き加えられた支出についても不可解なことがあります。支出した年月日は明記されていますし、何に支出したのかも明記されています。それらが真実であれば、おそらく会計帳簿に記載していたから支出明細が分かったのでしょう。そうであれば、収支報告書の訂正前の提出時になぜ記載しなかったのか、不可解です。記載しても赤字にはならないからでしょう。
本当に「なでしこの会」が支払う義務のあった支出だったのでしょうか? 領収書の宛先を知りたいので、領収書を公表すべきです。一方、領収書の宛名が「なでしこの会」であった場合には、明らかに収支報告書の不記載罪が故意に行なわれたことになります」