◆貿易の国家統制強化で待遇が悪化
このような変化の中で、「賃加工」の労働環境はむしろ劣悪になっていることがわかった。2023年8月、両江道の協力者は、次のように実態の一例を伝えてきた。
「食糧を得るために昼夜分かたず働く人が多い。小さなLED灯の下や、それもなければロウソクの下で長く細かい作業をするため、急に視力が落ちる人が大勢いる。市場から一時、虫眼鏡がなくなるほどだった。今では、眼鏡をかけた人を見かけると『カツラを作っている人だろう』と考えるほどだ」
2023年12月、貿易会社が運営する「賃加工」業に対し、国家が本格的に統制を始めた。「賃加工」は、おおむね個人の請負い仕事であり、契約相手の貿易会社が支給する労賃と食糧で生計を維持することができた。
しかし現在、中国との貿易そのものを国家が強力に統制するようになり、利益を求める貿易会社が、自らの裁量で輸出入業務をすることはできなくなった。国が品目と数量と物量をコントロールするようになったのだ。
このため、「賃加工」労働に対する代価も国家が統制するようになる。最近は、国産の白米やトウモロコシが支給される程度で、かつて貿易会社が支給した成果金などは一切なくなってしまったというのが、最近の変化についての協力者の説明だ。
毛性製品が国連の制裁対象から除外されている状況は変化しそうになく、今後も北朝鮮から大量のカツラや付けまつげが中国に輸出され、それが「中国産」として世界中の市場で販売される構造は続くだろう。急伸する「賃加工」製品の輸出の影には、民衆に対する搾取、そして苦痛があるのことを忘れたくない。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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