この日の訓練では、エアソフトガンが使われた。突入する隊員に向け、教官が模擬の手榴弾を次々と投げ込む。炸裂音と煙のなかを進む。(2022年7月・オデーサ・撮影:坂本卓)

◆「自分が銃を持つなんて」

この日参加したのは、20~50代の男女で、学生や会社員、主婦らだ。数カ月にわたる訓練を続けてきた。 建築士の女性、マリアさん(30)は、ロシア軍の攻撃で友人を亡くしたことから、防衛隊に志願。実銃を撃つ訓練を重ねた。 「自分が銃を持つなんて思いもしなかった。でも故郷を守るためには必要と感じています」

 

建築士のマリアさんは、ロシア軍の攻撃で友人を亡くしたことから市民防衛隊に志願。「自分が銃を持つなんて思いもしなかった。でも故郷を守るためには必要」と話す。(2022年7月・オデーサ・撮影:玉本英子)

侵攻が始まって以降、各地で市民防衛隊が編成された。自発的な市民からなり、要請があれば、検問やパトロールも担う。 ビクトリアさん(52)の職業は服飾デザイナー。2カ月前に防衛隊に登録した。黒海沿いの美しい浜辺で泳ぐのが毎年の楽しみだったが、いまはそこに飛んでくるミサイルに怯えなければならないと憤る。 侵攻が始まり、毎日、市民の命が奪われるなか、意識が変わったという。 「私はもう『平和な市民』でいることはできなくなった」 ミサイルや砲撃による民間人の犠牲は絶えない。ロシア軍が再び攻勢に転じれば、近隣都市への進撃もありうる。どの隊員の表情にも切迫感があった。

ビクトリアさんは服飾デザイナー。侵攻が始まり、市民の犠牲が絶えないなか、「私はもう『平和な市民』でいることはできなくなった」と話した。(2022年7月・オデーサ・撮影:玉本英子)
市民防衛隊の訓練は、定期的に実施される。数日にわたる泊りがけの訓練もあり、実弾演習のほか、救護活動なども学ぶ。(2022年7月・オデーサ・撮影:玉本英子)
訓練用のエアガンを準備する英国人義勇兵の教官。圧力と発射速度を調整して威力アップしているとのことだった。BB弾で負傷して出血する隊員もいた。(2022年7月・オデーサ・撮影:玉本英子)

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