◆2592万円の巨額キックバックを不記載
三ツ林裕巳衆議院議員(埼玉13区)が代表を務める政治団体「新日本情勢調査会」(以下、「調査会」)が、2019年以降、安倍派(清和政策研究会)のパーティ券収入の一部である2592万円をキックバックされていたにもかかわらず政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載していなかったなどとして、三ツ林議員ら3人が、政治資金規正法(以下、規正法)違反の疑いで、東京地検に3月25日に刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
告発状によると、三ツ林議員が代表の「調査会」は、2018年以降、安倍派の政治資金パーティの収入の中から、寄付金名目で2954万円ものキックバックを受けていた。内訳は18年が362万円、19年が784万円、20年が1016万円、21年が642万円、22年が150万円だ。
公職選挙法の公訴時効が5年間のため、18年の362万円については今回の刑事告発から除かれているが、それでも19~22年の間の総額は2592万円に及ぶ巨額だ。この数字は、安倍派に所属していた議員に対して自民党が実施・公開した派閥からの寄付金に関するアンケート結果と、総務省が公開している収支報告書から算出した。
「調査会」の裏金問題を刑事告発したのは神戸学院大学の上脇博之教授だ。
「18年分については時効の壁で告発できませんでしたが、19年~22年の計2592万円のキックバック分を裏金として告発しました。一部は支出、残りをプールしており、悪質と判断しました」と告発理由を説明した。
◆振り返り調査できない18年19年に大量の支出
訂正された三ツ林議員の新日本情勢調査会の収支報告書。多額の飲食代、贈答品代が並ぶ。
インターネット上に公開されている収支報告書で一番古いものは2020年度の公開分だ。その前の2年間で三ツ林議員が代表の「調査会」は安倍派から1146万円のキックバックを受けていたにもかかわらず、19年から20年への繰越金を約1327万円減らす訂正がされていた。この訂正も虚偽だとして今回の告発対象とされた。
三ツ林事務所は読売新聞の取材に対して「パーティ代や車のリース代などを支払った大量の領収書がみつかった」とこの訂正に関して説明し、「派閥から還流分を充てていた可能性が高いが、担当者が昨年亡くなり詳細不明」と回答している。
20年以降も支出の追加や訂正があり、22年の支出は、元は約416万円だったのを約607万円に修正しており約191万円増えている。その多くが飲食代や交通費などで、35件以上も訂正された。20年以降の訂正に比べて2018年、2019年の支出額があまりにも突出している。
「調査会」は国会議員関係団体という区分に属しており、公開請求を受けると人件費を除く支出に関しては一万円以上の領収書を公開しなければいけないが、2018年、2019年はすでに公開期限が過ぎており支出の詳細を調べることはできない。
◆故意の虚偽記入は明らかだろう
告発状では19年の支出額が「不自然」であると指摘する一方、19年から20年への繰越金を約1327万円減らす訂正がされていたことを虚偽記入に該当し「悪質だ」とも指摘している。
今回の訂正について上脇博之教授は、三ツ林衆院議員を次のように厳しく批判した。
「19年からの繰越金を約1327万円減らす訂正がなされていたのは不自然です。その訂正が真実なら、19年末当時保有しなかった約1327万円を20年に繰越したと収支報告書に記載したことになるからです。故意に虚偽記入したことは明らかでしょう。あまりにも悪質です」
安倍派からのキックバックの額が多かった上位三人は立件された。その次にキックバックの額が多かったのが三ツ林議員だ。立件された議員たちと三ツ林議員の違いは金額だけだったのだろうか。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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