◆1480万円が使途不明
自民党の今村洋文元衆院議員。本人のHPより。
安倍派(清和会)の政治資金パーティ販売収入の中から2022年に220万円のキックバックを受けていた政治団体「黎明の会」。その代表の今村洋文元衆議院議員と、会計責任者だった大田富彦名古屋市議会議員ら3人が、20年分~22年分の政治資金収支報告書(以下、収支報告書)を提出していなかったとして、3月11日に名古屋地検に告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆河村たかし氏の秘書、維新を経て自民党へ
告発したのは、2022年から自民党5派閥の不記載事件を告発し続け、今年に入ってからも派閥の裏金事件を告発している神戸学院大学の上脇博之教授。
告発状によると、「黎明の会」は政治資金規正法(以下、規正法)が義務付けている20年分~22年分の収支報告書の提出を愛知県選挙管理委員会に行なっていない。そのため「黎明の会」は、規正法により23年6月1日以降、「政治活動(選挙運動を含む)のために寄付を受け、又は支出することができない団体」となっていると愛知県公報に掲載されていた。
「黎明の会」は22年に派閥の政治資金パーティの販売収入のうち220万円をキックバックしてもらっていたことが、安倍派の訂正された収支報告書や自民党の発表からわかっている。しかし、そもそも収支報告書が提出されていない。いったいこの220万円が何に使われたのか、不明のままなのだ。
今村元議員は、河村たかし衆議院議員(現名古屋市長)の秘書を経て、2012年の衆議院議員選挙で日本維新の会の公認候補として比例東京ブロックで初当選した。その後、2015年に自民党に入党し、21年の選挙では無所属で東京15区から立候補し落選。次期総選挙では東京9区から自民党公認候補として立候補する予定になっている。
◆約1480万円が使途不明、選挙の残金約247万円が消えた?
告発状によると、「黎明の会」の19年末の会計残高は35万円弱だったが、20年の収支は一切不明だ。「自民党東京都支部連合会」は、21年分収支報告書によると「黎明の会」に計2010万円の寄附をしていた。
21年の総選挙に立候補した今村候補の選挙運動費用収支報告書の要旨によると、「黎明の会」から750万円の寄付金を受けていた。これが2010万円の一部だとしても、残りの1260万円と安倍派から22年にキックバックされた220万円を合わせた約1480万円の寄附金収入が使途は不明のままなのだ。
21年総選挙における今村候補の収入は「黎明の会」からの寄付を含めて800万円、それに対して、公費負担を除く実質的な支出は約553万円。その差額の約247万円はどこへいったのか? それも現状では確認しようがないのだ。
◆収支報告書の不提出は論外
告発した上脇教授は次のように指摘する。
「黎明の会は、20年以降収支報告書が提出されていないので収支すら確認できませんし、私の調査で判明した収支以外については2022年まで一切不明のままです。22年分までの収支報告書の不提出は、裏金づくりのためでもあるでしょうから悪質だと判断したので名古屋地検に告発しました」
収支報告書の公表なしに政治資金の透明性は確保できない。虚偽記載や不記載も大きな問題だが、収支報告書の不提出は論外、それ以前の問題である。
それにも関わらず、自民党は23年7月に、次の総選挙で今村洋文氏を東京9区の候補者として公認した。自民党は候補者選定においてきちんとした審査をしていないのではないか。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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