◆「監視カメラのない所なんてほとんどない」
北朝鮮の都市部で最近、監視カメラの設置が急速に進んでいることが分かった。バンデミック以降の経済悪化によって社会秩序の乱れや犯罪が増加しており、住民に対する統制と監視を強化するのが目的だと見られる。(カン・ジウォン)
「最近、街中や人の集まる所に監視カメラがめっきり増えた」
北朝鮮各地に住む取材協力者からこのような報告が相次いだのは昨年の後半からであった。その増加ぶりについて、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市に住む取材協力者は2月末に次のように報告してきた。
「国営商店、食堂、市場、街路、(金日成、金正日の)銅像の周り、それから保衛部(秘密警察)や安全局(警察)、逓信局などの建物の周囲で、監視カメラのない所なんてほとんどない。それなのに、設置作業を毎日見かける」
監視カメラ増設の理由について当局は、種々の犯罪を予防し、違法行為を根絶するためだと住民に説明しているという。その言葉をそのまま信ずる者はいないようだ。協力者は2月20日頃に恵山市内で起こった事件を例に説明した。以下は事件の概要である。
◆市場での騒動起こした人を映像で特定か
市内のある市場の近くの路上でひまわりの種を売っていた老人が、取り締まり組織にとがめられ、売り物を没収された挙句、ずるずると引きずられて行った。それを見て、現場にいた人たちが取り締まり官に一斉に罵声を浴びせた。取り締まり官らはその勢いにたじろいで、老人にひまわりの種を返し、二度と付近で商売をするなと言って立ち去った。
翌日、騒動の現場で声をあげていた6人が安全局に呼び出された。統制を妨害したとして警告を受け自己批判書を書かされたという。摘発された6人は、密告ではなく監視カメラの映像から特定されたと住民たちは話しているという。
「カメラであらゆる人間を監視しようとしていると思う。人が大勢いる場所で取り締まり組織の人間を批判したり、騒ぎが起こったりした場合、それを主動した者や騒ぎを煽った者を捕まえるのが目的だろう」
協力者はこのように言う。