◆「通告調査」でも3件に1件で漏えい
2010年度以降の測定データから同様に年度ごとの漏えい率を調べると、ほとんどの年度で石綿漏えい事故が起きていることがわかる。2023年度を加えた14年間の累計では87件中33件で漏えい率は37.9%。じつに3件に1件で石綿飛散事故が起きているありさまだ。
調査件数が少ない抽出調査ではないかとの意見もあろう。だが同省調査で重要なことは、自治体から推薦を受けた現場について事業者の同意を得たうえで、事前に立ち入り日程を通告して実施していることだ。
事業者はきちんと届け出など必要な法手続きのうえで真面目にやろうとしている。だからこそ国の測定調査に同意したのだ。当然、あらかじめ知らされた日程の測定に備えて万全の準備をして臨んでいる。にもかかわらず、4割近くで石綿が外部に漏えいしている。
「通告」調査ですらこの惨状なのだ。抜き打ち検査をすれば、間違いなくもっとひどい結果となるだろうことは同省もかねて認めているほど。それほどひどい実態が続いている。
同省検討会ではこうしたデータのまとめや考察、評価をしていない。この深刻さが同省の毎年の発表からは伝わらず、だからこそ規制強化や対策の改善につながらない。危機感がないといわざるを得ない。
石綿飛散事故だらけの現実を踏まえて、いまだ放置されたままの除去業者の許認可制や作業場内外の徹底した測定による業務管理などを早急に法令で義務づける必要がある。実地研修すらない除去作業者の講習制度見直しも重要だ。多くの課題がいまだ先送りされている現実に改めて目を向ける必要がある。
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