◆人民班を通して監視強化、掘っ立て小屋を破壊して下山強要
当局はコロナ以降、‘焼畑民’が出現し始めた時から取り締まりに乗り出したが、今年に入ってその度合がこれまでにないほど強化されているという。取材協力者によると、最近は取り締まり機関だけではなく、人民班を通じて山に向かう人がいないか、動向監視までしているという。
「いつどこへ行ったか分からないので、人民班を通じて山火事や森林破壊を防ぐという口実で山に入らないように統制しています」
取材協力者は続けて、「森林経営所や森林監督隊が、山火事を起こすからと、山中の畑を探しながら小屋まで壊して追い出している」と述べ、山へ入った人たちが下山してきていると伝えた。
※ 森林経営所:森林の造成、利用を管掌する機関 ※ 森林監督隊:山林の無断伐採や棄損を監督する機関
◆本当の目的は住民統制
「冬は寒くて山で暮らすのが大変だから下山し、春にまた山へ行く老人たちには目をつぶるけれど、若い人たちについては取り締まっている。(若い人たちが)組織生活に参加しないことや、行方不明、脱北などを防ぐのが目的だ」
このように‘焼畑民’の暮らしまで脅かして、住民統制を急ぐ当局の措置に対し、住民たちの間では不満が続出しているという。
「(山に入ってでも)何とかして生き延びようとする人たちが、何か悪いことをしたのかと、不満をよく口にしている」
金正恩政権の‘焼畑民’弾圧政策は、大きな流れではコロナ以降、ずっと推進してきた社会全般に対する国家の統制強化と軌を一にする。さらに、これまで管理が不十分であった土地(焼畑)と人員(焼畑民)を掌握しようという動きだと分析できる。
取り締まりが強まるにつれ、春の種まきを目前にした焼畑民のやりきれなさは、より一層増しているに違いない。
※ アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。