自爆ドローン攻撃の現場で「集合住宅の付近には軍事施設や工場もない。市民を狙った攻撃だ」と述べるフメニュク報道官。(2024年3月・オデーサ・撮影:玉本英子)

<ウクライナ現地報告>ウクライナ軍報道官インタビュー(1) 「強力な防空システム必要」「戦死遺族補償金未払いは取り組むべき課題」(写真7枚+地図)

◆侵攻3年め、ロシア軍の民間人攻撃続く

ウクライナ軍のウクライナ軍・オデーサ作戦戦略群管区のナタリア・フメニュク報道官のインタビューの第2回。ロシア軍による民間人攻撃や、ダム・原発破壊への懸念などについて聞いた。(オデーサ・玉本英子

自爆ドローン「シャヘド」が炸裂した集合住宅。9階建ての建物の上部が破壊され、フロアがすべて崩落。子ども5人を含む12人が死亡。(2024年3月・オデーサ・撮影:玉本英子)

■ ロシア側は「攻撃対象は軍事関連施設」と主張しています。実際には、ミサイルやドローンによって民間施設やインフラ、病院があいついで攻撃を受けています。これらは「誤爆」なのか、あるいは意図的に民間施設を標的にしているのでしょうか。意図的な攻撃ならば、その目的は何でしょうか?

オデーサ州検察庁が3月2日に公表した、自爆ドローン「シャヘド」の機体の一部とみられる部品。シャヘドのロシア軍の呼び名「ゲラン」の文字が見える。夜間に飛来することが多く、機体は黒い。(オデーサ検察当局公表写真より)

【フメニュク報道官】
どのような目的で民間施設への攻撃を続けているかについては、ロシア側に聞いたほうがいいでしょう。(軍事においては)誤爆が存在するのは否定しませんが、ではミサイルや砲弾だけでなく、カメラで制御するFPV自爆ドローン機が、70歳の高齢者が住む民家に命中したとき、それは「誤爆」と言えるでしょうか。人びとが人道支援を受けている場所に、ドロ-ンが爆弾を投下することは「誤爆」でしょうか。

昨日、オデーサの港湾インフラ施設が弾道ミサイルで攻撃されました。ロシア軍は、港の付近に住宅やガソリンスタンドなど、多くの民間施設があることを知りながら、攻撃は夕方の交通のピーク時、人びとが最も多く帰宅する時間帯に意図的に遂行されました。その結果、子どもを含む一般市民が犠牲となりました。それは「誤爆」なのか、それともテロか。答えは明らかです。

集合住宅の前では、犠牲者を追悼し、たくさんの花束が手向けられていた。ゼンレンスキー大統領もギリシャ首相とこの現場を訪れ、献花した。(2024年3月・オデーサ・撮影:玉本英子)

◆ダム、原発破壊は世界的な被害もたらす

■ 最近、ザポリージャのドニプロ水力発電所が攻撃を受けました。ウクライナ軍の防空システムが十分に機能しなかったのでしょうか? 今後、もしダムが破壊される事態が起きた場合、下流域の住民や基幹インフラにどのような影響が及ぶ可能性があるのでしょうか?

3月22日、ザポリージャのドニプロ水力発電ダムが巡航ミサイルの攻撃を受けた。写真は損傷した堤体の上の一角。もし破壊されてすべて決壊すれば、下流域に甚大な被害が及ぶ。(2024年3月・ザポリージャ:撮影・玉本英子)

【フメニュク報道官】
まずもって、わが軍は最悪の事態が起きないよう願っていますが、その準備は怠ってはいません。世界的な悲劇を引き起こす可能性のあるテロ国家を相手にしていることを踏まえ、その行動を予測し、把握することが私たちに求められています。なぜわが軍がミサイルを迎撃で対処できなかったのか。それは近代的なミサイル防衛システムが不足しているからです。ゆえに支援を求めています。

原発については、病院や薬局もヨウ素剤を準備しています。どのような事態が発生しても対処できるようにするためには、冷静な判断力、非常用避難袋の準備、避難計画が必要であることを認識しています。そして、その対処計画は実施されています。

私たちは国際的なパートナーと協力し、もしダムや原発破壊が起きたら、その悲劇はウクライナやヨーロッパだけではなく、世界全体の問題となることを訴えかけています。我々がいまロシアを止めなければ、彼らが望む方向へとさらに突き進んでいくことになってしまいます。

ザポリージャ州のロシア軍支配地域には欧州最大級の原発がある。戦闘激化で損傷したり、意図的な破壊、事故が起きれば、欧州だけでなく世界に被害が及ぶ。写真は放射能流出に備え、ヨウ素剤を携行する消防隊員。(2023年5月・ザポリージャ:撮影・玉本英子)

2END
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