北朝鮮当局が、個人がスマートフォンやパソコンなどで制作した動画を流布する行為を処罰するという内容の「4.27指示」を住民に通知したことが分かった。国家の承認なしに動画を制作したり共有したりすることは「非社会主義的行為」とみなして処罰するというのが骨子だという。北部地域に住む取材協力者が5月初めに伝えてきた。 (チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
◆個人制作の動画流布は「非社会主義」
協力者によれば、「4.27指示」は人民班会議で伝達された。「指示」は最高指導者が直接に命じた公式事項を指すのが通例なので、金正恩氏が4月27日付で出した内容が地方の末端に伝達されたものと思われる。
※人民班は末端の行政組織で通常20~30世帯、約60~80人程の人員で構成される。
「4.27指示」の内容について、協力者は次のように説明した。
「写真館やコンピュータの専門家が、中国から入って来た編集機を使って動画を編集、流布する行為があれば申告せよという指示だ。特に、若者たちがダンスや声楽やギターを習う映像を作って回し見するのは『非社会主義的行為』とみなすそうだ」
金正恩政権は、韓国や外国の映画や音楽などコンテンツの流布や視聴を強力に統制し、処罰してきた。2020年12月には「反動思想文化排撃法」を制定し、統制と処罰の水準を格段に強化した。この法律の最高刑は死刑である。
しかし、ここに来て韓国の影響を排除するだけでなく、国内で個人が制作した映像の取り締まりにも乗り出したわけだが、きっかけがあったようだ。協力者は説明を受けた内容について次のように述べた。
「平壌の学生たちが、恋愛の仕方、口づけの動作などを撮影して、互いに見せ合っていたことがばれて摘発されたのがきっかけだそうだ。恋愛の際の言葉遣い、敬語の使い方など、日常生活に役立つ教育資料さえも取り締まりの対象になっている。私が見ても全く問題ないと思うのだが」
◆個人の携帯電話を徹底検査、不意の家宅捜索も
それでは、具体的にどのような取り締まりが進行中なのだろうか。協力者は説明を続ける。
「携帯電話を持っている人は、何かあればまず回収されて検査だ。外で何か(検査に)引っかかっても携帯電話から調べる。家にも不意にコンピュータの検閲に来る。写真館や図書室、電子通信奉仕所(携帯電話やアプリなどの通信関連商品を扱う専門店)などでもずっと検閲が続いている。
キルドンム(北朝鮮のナビゲーションアプリ)や公式的な(イントラネット)網から受け取った(ダウンロードした)もの以外は、個人が撮ったもの、編集して作ったものはすべて取り締まるということだ。携帯電話の記憶容量が大きくないので、短いものしかを保存できないのだが、それすらも問題にしている」
韓流に対する徹底的な取り締まりに続き、国内で制作した映像物まで取り締まる北朝鮮当局。外部情報の遮断だけでなく、国内の情報も勝手に流通しないよう徹底的に管理し、統制下に置こうというのが金正恩政権の意図だと見られる。
アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取っている