中国側から撮影した茂山鉱山。北朝鮮最大の鉄鉱山である。2012年3月、ナム・ジョンハク撮影。(アジアプレス)

北朝鮮最大の鉄鉱山である咸鏡北道(ハムギョンプクド)の茂山(ムサン)鉱山で、4月分の食糧配給がトウモロコシ3キロしか支給されず、労働者の間で不安が広がっていると現地の取材協力者が伝えてきた。近隣の協同農場での援農動員に希望者が殺到しているという。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン

◆大企業の運営不振続く

「4月の茂山鉱山の労働者への配給は、3キロのトウモロコシ以外に何もなかった。4月の祝日(4月15日の金日成生誕記念日)の特別配給も何も出なかった」

茂山郡に住む取材協力者は4月末にこのように伝えてきた。トウモロコシ3キロは、労働者本人の配給規定量の3日分にも満たない量だ。

茂山郡は中国との国境に位置する推定人口10万人ほどの中都市で、北朝鮮最大の鉄鉱山を有する。この茂山鉱山は、複数の工場と職場、独自の大学と技能工養成所も持つ大型の連合企業所だが、2017年の国連安保理の経済制裁によって、産出する鉄鉱石が中国に輸出できなくなって不振が続いていた。

さらにコロナ・パンデミックによる国内経済の悪化が追い打ちをかけ稼働率が低下、労働者への食糧配給は1カ月に規定量の5~7日分程度しか支給されない状態が続いていた。

※大企業である茂山鉱山では、職場ごとに配給量に差がある可能性がある。

茂山郡の中心部の様子。2016年10月に発生した豆満江大洪水の直後に中国側から撮影(アジアプレス)

◆配給支給の農村動員に志願者殺到

4月後半から、全国の協同農場への援農動員=「農村動員」が始まっている。茂山鉱山でも、周辺の農場に田植えや草取りなどに動員する労働者を選抜することになったが、志願者が殺到する異例の事態になっているとして、現地の協力者は次のように説明した。

「『農村支援突撃隊』を作り、近隣の農場に派遣を始めた。職場ごとに20人ずつ選抜するのだが、動員期間の食糧配給は、鉱山が15日分を出し、残りは農場が負担することになった。嘆願方式で募集したところ、あまりにも多く集まりすぎた。鉱山に出勤して支給される配給ではまったく足りないからだ。選抜された人員は4月29日から農村に派遣された」

農村動員といえば、重労働で労働者に敬遠されるのが常だったが、今年は希望者が殺到する現象が起きているわけだ。

◆「このままでは飢えることに」…不安が拡散

現在、国営の食糧専売店の「糧穀販売所」では、一般世帯を対象に月に2回に分けて白米やトウモロコシの販売を行っているが、合わせて5~7キロ程度に過ぎない。市場活動の統制強化で都市住民の現金収入は激減しており、食糧を自力で調達することがきわめて困難になっている。

このまま飢えることになるのではないかという心配の声が、各地から寄せられている。

※アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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