北朝鮮と中国の国境である鴨緑江上流で密輸が再開された模様だ。中国当局は取り締まりを強化しているが、北朝鮮当局が主導する「国家密輸」で物資が行き来しているという。5月中旬、朝中貿易事情に詳しい吉林省の貿易業者A氏にインタビューした。 (チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
◆中国側市場に並ぶ北朝鮮産水産物
A氏によると、密輸の現場は北朝鮮の両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市付近と、対岸の吉林省長白朝鮮族自治県である。鴨緑江上流域では、かなり以前から朝中間の密輸が活発に行われていたが、コロナ・パンデミックを機に両側で警備が強化され、密輸は断絶していた。それが最近再開されたとA氏は説明する。
Q 朝中国境は、今どのような状況ですか?
A 最近になって密輸が始まった。特に、(国連安保理の)制裁で統制されている物資が北朝鮮に送られている。中国当局は取り締まりを続けているが、一部の密輸業者が二十一道溝や十五道溝付近で密輸を再開した。
※二十一道溝は恵山から見て鴨緑江上流、十五道溝は下流に位置する。パンデミツク以前から密輸が盛んに行われていた地域だ。
Q どのような物資が密輸されていますか?
A 主に北朝鮮側が求める自動車や機械付属品、小型発電機などが密輸されている。今回、中国のBYD(高級車ブランド)の中古車2台も北朝鮮に渡った。中国に入ってくるのは、主に銅精鉱や水産物などの資源が中心だ。長白市場では、北朝鮮の水産物が販売されていますよ。
◆税関員や警官も立ち会う「国家密輸」
Q 密輸はどのように行われていますか?
A 北朝鮮側は「国家密輸」の形で行われている。辺境部隊(中国の国境警備隊)が、巡察して取り締まりしているが、北朝鮮側が迅速に行うため、ほとんど捕まることはない。
※「国家密輸」は、国家の承認を受けた北朝鮮の貿易会社が中国の個人密輸業者と行っている。北朝鮮側では税関員、保衛員(秘密警察)、安全員(警察)などの人員が現場に立会う「公式」の手続きをし、品目と数量を厳格に管理して行われる。