畑でトウモロコシを収穫する農民たち。2023年9月下旬、平安北道朔州郡を中国側で撮影(アジアプレス)。

◆19年頃から政権は高利貸しを厳しく非難

金正恩政権は2019年頃から、非社会主義行為との闘争の一環として、農村における高利貸しの取り締まりを強力に行ってた。取材協力者たちから度々報告が寄せられたが、代表的な事例を整理して紹介したい。

(1)2020年12月、当局が咸鏡北道の農村に取り締まり班を派遣し、高利貸し行為を行った農場の幹部を処罰し、高利貸しで得た食糧と現金をすべて没収するなど、強い統制を行った。

同時に金政権は、食糧や金を借りた者に対し、高利貸し行為を申告すれば返済しなくてよいと発表した。実際に返済を免除された農民が相当数いたという。しかし、この措置は後に別の問題を引き起こした。困窮農民に食糧や金を貸す人がほとんどいなくなり、「ポリコゲ」を凌げなくなったケースが続出したというのである。

(2)2021年4月、両江道(リャンガンド)から次のような報告があった。

「資本主義の残滓を掃討するとして、高利貸しをする者を地主や富農のような搾取者として扱い、健全な社会主義の生活様式を食い物にする行為であるから闘争せよと強調している」

国が困窮に十分に手を差し伸べることもせず、法外とはいえ、信用で食糧や金を借りて生き抜く方法さえ遮断してしまったので、困難な人はさらに困難になったというのが協力者の説明だった。

◆国による高利貸しは制度化するか?

この国による「高利貸し」が、制度として各地で実施されているのかについては、6月初旬時点で確認できなかった。もし制度化される場合、金正恩政権にとって得るものは少なくないように思われる。

第一に、個人による不法高利貸しの活動を抑制し、政権が警戒する「非社会主義現象」を減らすことができる。第二に、「絶糧世帯」を一程度救済し、餓死者が発生するような事態を防ぐことができる。第三に、国に利子収入をもたらす可能性がある。

制度化するために肝心なのは、国が十分に食糧を確保できているかどうかだ。また、事実上、国家が人民から高い利子を取る政策が、社会主義原則からの後退と映る懸念もある。今後の動向が注目される。

※アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取っている。

 

 

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